「朝食を抜くと太る」という過度な信仰の罠 朝食と体重の関連性は明らかになっていない

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これまでの観察調査を見直すと、この領域には方法論的な欠陥があるほか、先入観が入った研究にメタ分析(既存の研究のまとめ)を取り込むという問題点があることがわかった。朝食と肥満の関連性は懐疑的な目で検討されるべきであり、前向き臨床研究(追跡調査)によって確認する必要がある。

ランダム化比較試験(臨床試験の比較グループを無作為に選ぶ方法)を行っている例は皆無に近い。たとえ実施していても、朝食の必要性を裏付ける結果には、必ずしもなっていない。

さらにこの分野に混乱を生じさせているのは、2014年の研究で、普段、朝食を抜く人に朝食を食べさせ、朝食を食べている人に朝食を抜かせても、体重に影響はないと結論付けた。ところが同じ内容の1992年の実験では、どちらのグループも体重が減った。つまり、唯一言えるのは、朝食と体重の関係は明らかになっていないということだ。

こうした研究の多くは、食品業界が委託している場合が多く、バイアスがかかりやすい。ケロッグは、朝食にシリアルを食べることと、体重減の間に関連性があることを発見したという研究に資金提供している(この研究結果は極めて広く引用されている)。

クエーカーオーツ社(ペプシコーラの子会社だ)の研究部門センター・オブ・エクセレンスが資金提供した臨床研究では、オートミールか砂糖付きコーンフレークを、週末を除く毎日、4週間、厳しく管理された環境で食べ続けると、体重とコレステロール値が低下することを明らかにした。

朝食を食べる子は成績がいい?

この種の研究は、子供に焦点を当てているケースが多く、朝食を取る子供には肥満が少ないと主張する。だが、そこには大人の研究と同じ欠陥がある。

朝食を取る子供は学校での成績もいいという主張はどうか。多くの研究を体系的に見直すと、この主張は的を射ている場合が多いことがわかった。ただし、こうした研究は多くは、学校で朝食を提供するプログラムの影響を調べる過程で行われていることを考慮する必要がある。

朝食が、子供の学習と成長を改善するように見える理由の1つは、実に多くの子供が朝食を取っていないという残念な事実に起因する。米国では7世帯に1世帯、約1500万人の子供たちが空腹に苦しんでいる。

腹を空かせた子供たちが、栄養を与えられることで、学業や成長に改善が見られたとしても、さほど意外ではないだろう。しかしその結果から、すでに十分な栄養を与えられていて、朝食を食べたくない子供たちも、朝食を取るよう強制するべきか否かは判断できない。

朝食を抜く子供は、朝食を2回取る子供よりも過体重になりやすいことも、「研究で明らかにされて」きた。しかしそれは、学校でもう1度朝食を取りたがる子供は、家で空腹になるからであることがわかってきた。空腹の子供たちが、朝食を取る機会は奪うべきではない。しかしそれは、「朝食をたくさん取る子は、体重が減る」のとは違う。

つまり朝食の重要性に関する証拠は、非常に混乱している。お腹が空いているなら、食べればいい。しかし朝食を抜いたからといって、罪悪感を覚える必要はないし、周囲の説教に耳を傾ける必要はない。朝食に神秘的なパワーはないのだから。

(執筆:Aaron E. Carrollインディアナ大学医学部教授、翻訳:藤原朝子)

© 2016 New York Times News Service

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