速く走りたいなら炭水化物は「夜抜く」べきだ 最新食事法スリープローの効果とは
夕食にパンやパスタなどの炭水化物を抜き、正しい方法で運動を行えば、運動能力が大幅に上昇することが最新のスポーツ栄養学の研究で明らかになった。春のマラソンや持久力を必要とするレースに向けてアスリートはどんな食事をするべきか、これまで常識と思われていたことを一部覆す発見だ。
アスリートやその関係者にとって食事とは、まさにエネルギーをすべて注ぐような重大なテーマだ。それが選手のトレーニング、回復、体の発達、体づくり、そして試合結果の良し悪しに影響するからだ。
炭水化物を完全に抜くのは得策ではない
しかし、スポーツ選手にとっての理想的な食事とは何か、明確にはなってない。多くの栄養士やコーチは炭水化物を多く摂取することを推奨している。消化の過程で糖に変化する炭水化物は、運動の主なエネルギー源になる。しかし、体内に蓄えることができる糖質の量は少ないため、運動中に糖分を含む飲料や食品を補給しても、長時間の運動や激しい運動によって体内の糖質のほとんどは消費されてしまう。
そのため、アスリートにとって脂肪をエネルギーとしてうまく使えるようにすることがパフォーマンスを上げる要因のひとつだと主張する専門家もいる。引き締まったアスリートの体にも脂肪はついており、理論上はそれが長くハードな運動に耐えうるだけのエネルギーを供給している。炭水化物(糖質)を制限した食事にすると、体は脂肪を分解してエネルギーを補おうとするのだ。しかし、運動を始めてから脂肪が燃焼されるには時間がかかり、極度に炭水化物を制限するとハードな運動をこなすのが困難になりがちだ。
そこで、パリにあるフランス国立スポーツ体育研究所(INSEP)などの研究チームは、炭水化物(糖質)制限食を見直し、特に科学者の間で「スリープロー」と呼ばれるテクニックに注目した。
「スリープロー」はアスリート向けの食事法で、夕食に炭水化物(糖質)を抜くというものだ。すると翌朝、体に蓄えられている炭水化物(糖質)の量が少ないため、その後に運動をすると体は最も豊富にあるエネルギー源である脂肪を使おうとする。しかし、過去の研究では、この方法が競技のパフォーマンス向上につながるかという点で、結果はまちまちだった。
今回の研究結果は、1月に学術雑誌『メディスン&サイエンス・イン・スポーツ&エクササイズ』で発表されたもので、研究チームはスリープローの食事法が望ましい効果を挙げるには、適切なトレーニングと組み合わせて実施する必要があると考えた。