欲しいものは「ソーシャル」で作ってもらう?

そして、無印良品の「体にフィットするソファ」も生まれた

エレファントデザインが初期に手掛けたスタイリッシュな電話機は、結局発売されなかった。機能を盛り込めば当然価格は跳ね上がる。通常は電話に用いない特殊なコードを使えば、それもまたコストに反映されてしまう。そうした当たり前のことに、僕たちユーザーは気づいていなかったのである。

逆にユーザーの高すぎるモチベーションが問題になることもある。一般のユーザーが欲しいものとは懸け離れた、マニアックな商品ができあがってしまうというわけだ。

かつてパナソニックがレッツノートを作った際、コアファンによるコミュニティサイトに集まったユーザーの意見を汲んで、ボールの回転でポインタを動かすトラックボールを組み込んだことがあった。

熱狂的なファンはこれを支持したが、結果として、売れなかった。文字どおりボールが組み込まれ、異様に分厚いノートパソコンになってしまったからである。

一筋縄ではいかないユーザー参加型製品開発ではあったが、思いがけず、僕たち研究者もこの輪の中に加わり、一緒にその可能性を模索することになった。

産学協同プロジェクトといえば今風だが、学生によるユーザー参加型製品開発プロジェクト「Sカレ」だ。今年で7年目となったSカレは、22大学、29ゼミ、400名近い学生が参加する一大プロジェクトとなった。

 

即効性はないけれど…新しい開発現場の引力

現役大学生たちのクリエーティビティと企業の技術が「かたち」になるSカレ。2012年は青山学院大が総合1位となった。

Sカレでは、エレファントデザインによる空想生活というWebサイトで、製品企画の提示、支持者の募集を行う。

一定数の支持が得られれば協力企業とともに開発を始め、実販売にこぎつける。その実現数はすでに10商品以上にのぼる。

協力してくれる企業も増えた。たとえば、岐阜県大垣市で枡を生産する大橋量器や、広島県府中市で婚礼用家具を手掛ける宇野木工は、優れた技術を基に新市場を切り開きたいと思っている地場の中小企業である。

それから、ネスレのように、もともとユーザーを巻き込んだ製品開発にノウハウがあり、その成果をさらに発展させようとするグローバル企業も参加してくれる。さらに一昨年からは、物理的な製品開発だけでなく、今話題のアプリ開発についても、マイナビが協力してくれるようになった。

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