日本で最も知られているのは、無印良品の一連の企画だろう。たとえば、今でも販売されている「体にフィットするソファ」は、エレファントデザインと組んだ無印良品が、ユーザーを巻き込んで開発したヒット商品の一つだ。
10年以上が経った今でも、こうしたサイトはいろいろな試みを展開し続けている。レゴブロックの作品や、それを動かすプログラムを提案できるレゴのマインドストーム、Tシャツのデザインを提案・投票するスレッドレスドットコムなど、世界的にも、類似したビジネスが多く立ち上がっている。
ただ、当時期待されたほどには、一般に普及していない。もう少し別のアイデアが求められているのかもしれない。
知識の壁、顧客目線の罠
ユーザー参加型製品開発は、マーケティングの最も理想的な姿である。ニーズに応えることを第一に考えるならば、当の顧客が製品開発に直接関われば良いはずだからだ。その意味で、僕たち研究者が注目したのも当然だった。だが、現実に見えてきたのはいくつかの課題だった。
最も大きな課題は、ユーザーの知識の限界だった。僕たちに、これが欲しいという漠然とした思いがあったとしても、それを実現するための技術的な知識を持っているとは限らない。
また、技術的な知識がないために、そもそも実際に作ることができるのはどんなものなのかという可能性についても、はっきりとわかっていないことが多い。
漠然としたアイデアを製品にしようとすれば、それを具体化しなければならないメーカーの負担は増える。
ユーザーはユーザーで、いざ製品が出来上がりに近づいてきた段で、こういうものを作りたかったわけではない、と引いてしまったりする。
結局お互いに疲労感だけが残り、製品開発は失敗に終わる。
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