頼られるリーダーは「9割冷酷、1割優しい」 知っておきたい「叱り方」と「褒め方」
マキアヴェリは「冷酷な君主は、ごくたまの見せしめの残酷さを示す」と書いています。これは、必要な場面で誰か一人を叱ることで、その影響力を全体に波及させ、すべての部下の気持ちを引き締め、仕事に必要な緊張感を浸透させる効果があるのです。
あとあと問題になる妥協を許さない
2番目の「長い目で見て、失敗や惨事を未然に防ぐための冷酷さ」とは、どんなことでしょうか。これはリーダー特有の冷酷さで、先を見越したうえで「あとあと問題になるような甘えや妥協を許さない」ことを指します。
「危害というものは、遠くから予知していれば、対策を立てやすいが、ただ腕をこまねいて、あなたの眼前に近づくのを待っていては、病膏肓(やまいこうこう)に入って、治療が間に合わなくなる」
「ローマ人は遥か前から難儀を見ぬくことができたために、つねに対策が講じられた(中略)。もとより時を待てば、何もかもがやってくる。良いことも悪いことも、いずれかまわず運んできてしまう」(共に『君主論』第3章より)
リーダーは部下と違い、その一歩先のことまで視野に入れなければなりません。今日、部下の小さな手抜き、妥協、間違いを見逃せば、数日後、あるいは仕事の完成時に大きな損失やトラブルにつながるからです。
例えば、リーダーは先を見据えて冷酷にこんな判断をしておくべきでしょう。
○トラブルの芽を見つけたら、目をそむけず最優先で処理させる
○部下の働きぶりを見て、全力を出していないことを叱る
○仕事の基本動作ができていない部下には、正しい動きを指摘する
○明日のために、今日やるべきことを完遂させ、残させない
ここでの「冷酷さ」とは、仕事の先延ばしや嫌な問題対処を避けたがる気持ちなど、甘えを許さないことです。仕事は、階層が上に行くほど遠くを見通す必要があり、下に行くほど目の前のことだけに追われます。新入社員は、今日1日を無事に過ごせばほっとできますが、指導する上司や先輩社員は、担当する新人の半年後の成長、1年後、それ以降の姿まで思い描いて教育計画を進める必要があります。
優れたリーダーは指導する部下より常に先を見据えています。だからこそ、部下から見て妥協してもよいこと、いま決めなくてもよいこと、今日この場で仕上げなくてもよいと思われることも、リーダーの視点からは「許すことが絶対できない」ものに見えるのです。
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