頼られるリーダーは「9割冷酷、1割優しい」

知っておきたい「叱り方」と「褒め方」

カルタゴの名将ハンニバルは、非人道的なほど冷酷だったとマキアヴェリは述べていますが、彼の軍団指揮は常に先を見据えており、その冷酷さはのちのちの軍団の勝利につながりました。だからこそ、部下たちは彼の冷酷さに心酔し、ハンニバルを支持したのです。

相手の自尊心を傷つけず、熱意を奪わない

では、冷酷さを正しく発揮して、部下や新人を叱るときに注意すべきポイントはあるのでしょうか。マキアヴェリは、冷酷さを発揮する際には、相手の恨みを買わないことだけは気を付けるべきだと繰り返しています。

「君主は、たとえ愛されなくてもいいが、人から恨みを受けることがなく、しかも怖れられる存在でなければならない。なお、恨みを買わないことと、恐れられることとは、立派に両立しうる」

「とくに他人の持ち物に手を出してはいけない。それに、物を奪うための口実ならいくらでも見つかる。ひとたび略奪で暮らす味をしめた者は、他人の物を奪う口実をいくらでも見つけてしまう」(共に『君主論』第17章より)

マキアヴェリは、他人の持ち物(財貨・家族)を奪うことは、必ず恨みにつながるので、それだけは君主も厳に慎むべきだと述べていますが、現代ではこのような物質的なものを相手から奪う上司は、法的に存在できません。

しかし、部下から精神的なものを奪って平気でいる、愚かな上司(君主)は現代にいくらでも存在しています。部下の精神的なものとは「自尊心」「やる気」「健全な勤労意欲」です。

間違った行為を叱るのではなく、仕事のミスで個人攻撃をしてしまう上司。部下に正しい分量とレベルの仕事を与えず、過剰な疲弊や怠けを許してしまい、やる気を失わせる上司。扱いが不公平で、評価基準もあやふや、それがために部下の健全な勤労意欲を奪う上司。このように、部下から恨みを買って平気な上司がビジネスにも溢れています。

優れた上司(君主)は、仕事への厳しさで恐れられても、部下の熱意や自尊心、健全な勤労意欲を奪わず、それらを正しく育てていきます。冷酷さは、マキアヴェリのように使い方を心得ておくことでこそ、大きな効果を発揮するのです。

マキアヴェリは『君主論』で、君主はケチであることを薦めています。理由は、普段から散財をしていれば、いざという時に余裕がなく、普段ケチであれば、稀な恩恵に市民は大きく感動するからです。

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