新首相よ、中国の罠にはまるな パトリック・クローニン氏が語る日中関係

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北朝鮮の問題が未解決であることにも留意すべきだ。先行きが非常に不透明なこの時期に、北朝鮮が核兵器を保有している。

こういう状況を背景に不確実性が高まっており、この地域で防衛費が増大し、新たな安全保障について議論がなされている。

パトリック・クローニン
新アメリカ安全保障センター上級顧問
同アジア太平洋プログラム上級部長
オックスフォード大学で修士・博士号を取得。ジョージタウン大学やジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)、ヴァージニア大学で教鞭をとる。2001年、米上院議会より、米国際開発庁三番目のランクに指名。その後、国際戦略研究所(IISS)や戦略国際問題研究所(CSIS)などの研究機関で活躍。
前職は、米国防大学戦略研究所所長。

今年度、アジア諸国の防衛費は欧米諸国の防衛費を初めて上回ると予想されている。日本は防衛費増加の先頭に立っているわけではないが、それは一つには景気が低迷しているからだ。しかし、突出して防衛費を増やしている中国と韓国だけではなく、ASEAN諸国やインドも防衛費を増大させている。

――尖閣諸島を巡る争いは、日本と中国の2国間の争いとして見るべきでしょうか。それとも、より大きな文脈でとらえるべきものでしょうか?

日本としては、この問題を大局的な見地からとらえようと努めることが極めて重要だ。尖閣諸島は、中国にとって決して最優先事項とはならない。

ただ、日本の人々には、尖閣問題が国家主権の試金石のように見えているので、そうした見方は受け入れられないだろう。

国家の安全保障計画という観点からすると、日本にとっては以下の点を検討することが非常に重要だ。

つまり、中国はいったい何を目指しているのか。日本にとって何が国益にかなうのか。日米同盟から得られる利益は何か。日米同盟をいったいどのように機能させたら、不必要な紛争を招くことなく、中国の強硬姿勢を効果的かつ理性的に抑えることができるのか、についてだ。

――中国は、この地域に戦略的なジレンマを生じさせています。

そのとおりだ。中国を包囲し、中国に軍事力強化と挑発行為のほかに道はないと思わせるようなシナリオは、誰も望んでいない。

一方、中国がつねに一歩一歩探りを入れては他国から領土を奪い取る「削り取り」戦略が成功することも、誰も望まない。中国のこの戦略には、「まさに中国こそが中華圏の盟主であって、近隣諸国はこのヒエラルキーを受け入れるかぎりにおいて平穏にやっていける」という含意がある。

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