インフレと国債の暴落は別
そして、国債の暴落とインフレの進行の順番は、国債の暴落が先だ。リフレ政策は、金融的な政策だから、まず名目金利が急騰し、国債価格の暴落そのものが起きる。それが波及してモノのインフレになるかというとならない。すぐに不況になるから、内需は増えない。円安による輸入インフレにとどまる。
もちろん、日銀に圧力をかけず、金融緩和の拡大をせずに、財政支出などを急増させて起こした場合には、財政インフレが起き、実需のインフレが起きる。しかし、このときも、それより先に、国債の大量発行で、価格は暴落し、名目金利が上昇する。
国債価格が下落したとしても、買い手がない場合、無理に値を下げて売るより保有し続けるほうが合理的だから、売りが出なくなり、暴落しないのではないか、という疑問は、現実的には当たる可能性はある。
ただ暴落となるかどうかは、そのときの投資家の動向次第だ。政治の対応が悪ければ、投機売りが勢いを増し、そうなると投げ売りが続く可能性はある。
この場合、すべての投資家が合理的に動けるとは限らない。一定程度下落すると自動的に売らなければいけない投資家、保有者もいるのだから。ただし、そのときは、日銀が買い支えることになるだろう。そこで押し戻される可能性はある。
さらにいえば、08年のリーマンショックのときに起きたように、市場で取引が生じなくなった場合、時価会計を停止して、簿価を認めるという対応を政府はするだろうし、国債保有金融機関はそれを求めるだろう。このときは、市場価格が下落しないというよりは、市場が「焼失」あるいは「消失」する。しかし、実質価格は暴落している。
重要なポイントは、インフレと国債の暴落とは別であり、一般消費財市場と資産市場とは別であるということだ。金融的現象は、まず、資産市場のみに起こる。だから、国債が暴落し、名目長期金利は急騰する可能性はあるが、このとき、短期金利を引き下げても金利は下がらず、むしろ (国債以外のリスク)資産インフレを加速する。国債を買い入れて対抗するしかない。
このときに、マネーが市場にあふれてインフレになるというが、このときもマネーは資産に向かい、消費財には向かわないので、一般財のインフレにはならない。円安による輸入インフレのみだ。小国であれば、輸入依存度は高いが、日本は高くなく、エネルギー、食料以外は、国内生産により需要を賄うことがおおむね可能と思われるので、輸入インフレは、経済全体のインフレとしては、高いインフレ率にはならない。
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