「売ると決めたら売る」強さ
「やると決めたらやる。売ると決めたら売る」。坂本氏は自らの性格をそう表現する。
「たとえば売りたい、これが(売れ筋として)来ると思う商品があれば、専門のスーパーバイザー(SV)が反対しても、『いまのトレンドはこれなんです。だからここに置かないと』と言ってしまうこともありますね」。
スーパーバイザーは何店もの店舗を成長させた店長経験者が就くことが通例。そのやり手のSVさえも、説得してしまう押しの強さが、彼女の持ち味だ。
もちろん、ただ強引に押し切るのではない。自分の主張で相手を納得させるために、入念なリサーチは欠かさない。
休みの日は、競合店や参考となる店舗を何軒も回るほか、ファッション誌は毎月最低でも5冊は目を通す。プランタン銀座店においても、「どこのジーユーよりもおしゃれな店にする」と闘争心全開だ。
もちろん個人のファッション感度や販売力だけでは、重要拠点を率いる店長は務まらない。
プランタン銀座店は、売り場面積も標準的な店舗に比べて90坪と半分だが、正社員は通常の1~2人に対して3人を配置。アルバイトスタッフも40人程度(標準店は30人強)を抱える大所帯だ。
そもそも既存店舗と新店では、越えるべきハードルの高さが違う。
新店の店長は、辞令の発動からほんの2ヶ月の間に、商品の発注から予算管理、スタッフのシフト調整といった通常の店長業務に加え、全スタッフを採用し、1から指導・教育していかなければならない。並々ならぬエネルギーが必要とされ、普通の精神力では乗り越えられない。
坂本氏はどのようにして今の強さを手に入れたのか。その背景には、入社から約1年後、新米店長時代の経験がある。
坂本氏は大学卒業後、FR傘下で靴専門店「フットパーク」を運営するワンゾーンに入社した。
「靴は、日本では一番気を使われていないファッションアイテム。洋服は何着と持っていても、靴を何足も持っている人はそうは多くない。それが手に届きやすい価格で服と同じように提案できたら。そんな可能性がおもしろいと思ったんです」。
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