新日本プロレスはなぜ一部上場を目指すのか V字回復を遂げた「企業」の新たな挑戦
新日本の経営方針については、全株式の3分の2以上を、従来通りブシロードが所有するようにして、上場後も経営権を手放す気持ちはないそうだ。
プロレス人気が復活したとはいえ業界の中で会社の事業目標を打ち出せるような団体は、まだ新日本だけ。プロレス業界の会社が上場することに証券業界から異論は出ないのか。そんな率直な質問を木谷氏にぶつけてみた。
「僕はないと思います。体験から言いますが、プロレスって安定した利益を上げやすい業種ですよ。スマホのゲーム会社の方が今は大変でしょう。半数以上の会社は、赤字でしょうから」
もうひとつ、聞きたいことがあった。現在、プロレスというジャンルにおいて世界ナンバー1の企業であるWWE。そのWWEが、1999年、ニューヨーク証券取引所(現)に上場した時、ディスクロージャー(情報公開)の一環として「プロレスはシナリオのあるエンターテインメントである」ことを公表した。これと同様のカミングアウトらしきものが日本でも求められるだろうか。
「日本ではいらないと思います。たとえば株主総会で質問が出る可能性はあるかもしれない。それに関しては『ではあなた、ゲーム会社にプログラム・ソースを出せと言うのですか?』という風に言い返せばいい。ゲーム会社にはそう言えないはずです。だから『そこは企業秘密です』ということでクリア出来る気がしますね。
むしろ株主総会まで来ているほどの株主ならば、『何ヤボなこと言ってるんだ?』という雰囲気になるんじゃないでしょうか(笑)。それよりどうしてあの選手がトップにならないのか、なんていうファン株主の声が聞こえてくるかもしれませんね」
木谷高明は、こんな風にして上場への自信を口にするのだった。しかし、今後の業績成長に向けてはいくつかの課題があることも事実だ。
世界ナンバー1プロレス会社・WWEへ選手が移籍
ひとつは、団体をリードしてきた有力選手の離脱問題だ。
今年1月、ある出来事が業界を震撼させた。新日本生え抜きのスター選手・中邑真輔がWWEへ移籍したのだ。団体のトップが海外に移籍する出来事は前代未聞。そんな中邑の移籍劇について、木谷氏は、次のように語る。
「まんまとWWEにしてやられた感はありますね。でも中邑選手の移籍の理由はお金ではないようです。レスラーとしての野望ならば誰にも止められない、仕方がないですよね。35歳という年齢も現役選手としては最後のチャンスだろうし、私だってそうしたかもしれない(笑)。今はむこうでの活躍を期待したいです。選手の抜けたダメージは、しばらく興行収入に響くでしょうね。しかし新日本としては新たな戦略を打ち立てて、G1クライマックスが開かれる夏の頃には新しい団体のイメージを訴えていかないといけません」
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