貸借対照表から企業の安全性を分析しよう 会計知識の初歩【case study日産自動車】

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こちらも、日産の数字を使って計算してみましょう。
日産の当座資産は4兆8176億円、日産の流動負債合計は4兆1452億円ですから、日産の当座比率は116%となります。

一般的には90%以上あれば、短期的には安全であると判断されますが、日産の当座比率は安全水準にあると言えます。このように、企業の短期的な安全性を分析する場合、「流動比率」と「当座比率」をあわせて見ることで、より正確に分析することができるのです。ただ、いずれにしても業種や個別企業の財務内容、および資金繰りの特性を踏まえたうえで評価しなければなりません。

倒産危険度をいちばんよく表す指標「手元流動性」

貸借対照表の中で短期的に最も重要な指標、それは「手元流動性」です。資金繰りが厳しい企業にとっては、特に大切な指標となります。企業はおカネが無くなると倒産するからです。「手元流動性」とは、簡単に言いますと、すぐに使うことのできるおカネを月商で割ったもので、「(現預金+すぐに売れる資産+すぐに借りることのできる資産)÷月商」という計算式で出すことができます。つまり、すぐに使うことのできるおカネが、月商の何カ月分あるかを調べるのです。ちなみに、月商は、1年間の売上高を12カ月で割って算出します。

日産の場合はどうでしょうか。日産の平成23年度の売上高は9兆4090億円ですから、月商は7840億円となります。これを「(現預金+短期有価証券)÷月商」の計算式に代入しますと、1.075となります。つまり、日産は1.075カ月分の手元流動性を確保しているということです。

手元流動性は、一般的に大企業で1カ月分強、中堅企業で1.5カ月分、中小企業だと1.7カ月分ほど持っていれば安全だと言えます。日産の場合は、1.075カ月分と算出されましたので、短期的な資金繰りの心配も極めて低いと言えます。そして、日産の場合、販売金融債権も売却が可能なものが多く、さらには、金融機関からの借り入れなども容易でしょうから、実質的な手元流動性はさらに多いと言えます。

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