貸借対照表から企業の安全性を分析しよう 会計知識の初歩【case study日産自動車】

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返済義務のない「純資産の部」。大半は「株主資本」

右側下部にある「純資産の部」を見てみましょう。こちらは大きく分けると「株主資本」「その他の包括利益累計額」「新株予約権」「少数株主持分」の4つの項目で構成されていますが、大部分が株主資本で占められています。

「株主資本」というのは、株主が入れてくれたおカネ(資本金、資本剰余金)、つまり元手と、その果実である利益の蓄積(利益剰余金)です。日産の「株主資本」の中で最も高額なものは「利益剰余金」です。

これは純利益の蓄積のことで、ここから株主への配当が支払われます。逆に言いますと、配当は原則的に「利益剰余金」からしか支払われませんから、利益の赤字が続いて、この利益剰余金がマイナスになると配当ができなくなるのです。

「その他の包括利益累計額」は、資産のうち為替や時価の変動などで生じた時価と取得価格との差額のことを表します。この中にある「為替換算調整勘定」は△1兆1210億円と、非常に大きな赤字額になっています。この原因は、海外で保有している工場や金融資産などのドル建てやユーロ建てなどの資産が、最近の超円高水準によって含み損が生じてしまったからです。今後円安に傾けば、この赤字額は減っていくことになります。

会社の中長期的な安全性を示す指標「自己資本比率」

 貸借対照表の簡単な仕組みを知っていただいた後で、次に、貸借対照表を読み解くポイントについて解説していきます。どのようにして、会社の安全性を分析していくかを知っていただきたいと思います。

 当たり前ですが、会社は負債が返済できなくなると倒産します。ですから、会社の安全性を見極めるためには、資産を賄っているおカネのうち、負債がどれだけあるかを調べる必要があるのです。

 そこで、重要な指標の一つに「自己資本比率」があります。自己資本比率は企業の中長期的な安全性を表しており、「純資産÷資産=自己資本比率」という計算式で算出されます。日産の数字を使って計算してみましょう(他にも自己資本比率の計算方法がありますが、私はこの計算方法がいちばんわかりやすく、適切だと考えています。純資産の一部の項目を計算上除外するなどの他の方法も結果的にはそれほど大きな違いがありません)。

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