貸借対照表から企業の安全性を分析しよう 会計知識の初歩【case study日産自動車】

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日産の純資産合計は3兆4499億円、資産合計は11兆720億円ですから、自己資本比率は約31%となります。一般的には、設備等の固定資産を多く必要とする業種では20%以上、たな卸資産などの流動資産が多い業種では15%以上が安全ラインです。

また、金融機関を除くどの業種でもこれが10%を切りますと過小資本です。10%を大きく下回るようだと危険水域だと考えてください。さらには、純資産がマイナスになる(自己資本比率もマイナス)状態を債務超過と言い、とても危険な状態です。日産の自己資本比率は約31%ですから、設備投資を多く必要とする製造業の安全ラインである20%以上の基準を満たしています。ですから、日産は中長期的に健全な経営状態であると言えるでしょう。

ただ、ここで注意が必要です。自己資本比率は企業の中長期的な安全性を見極めるために重要な指標であることは間違いないのですが、必ずしも短期的な安全性を表しているわけではないということです。


短期の安全性を見る2つの指標「流動比率」「当座比率」

では、企業の短期的な安全性を判断するために必要な指標について説明しましょう。先ほど、「会社は負債が返済できなくなると倒産する」とお話ししましたが、正確には「流動負債が返済できなくなると倒産する」のです。先ほども言いましたが、流動負債とは1年以内に返済しなければならない負債ですから、この流動負債が返済できなくなりますと、即座に倒産する可能性が高まります。

ですから、短期的な安全性を考える場合、1年以内に現金化できる「流動資産」が「流動負債」をどれだけ上回っているかを調べるのです。そこで「流動比率」という指標があります。これは「流動資産÷流動負債」の式で算出されたもので、一般的には120%以上あれば当面の資金繰りには困らないとされています。

日産の数字を使って流動比率を計算してみましょう。日産の流動資産合計は6兆6100億円、流動負債合計は4兆1452億円ですから、流動比率は約159%です。安全ラインである120%を大きく超えていますから、短期的な資金繰りには問題がないと言えます。

もう一つ、「当座比率」という指標があります。これは、流動比率より厳しく安全性を評価するための指標で、「当座資産÷流動負債」の式で計算します。「当座資産」とは、流動資産の中でもより現金化しやすい資産のこと。つまり「当座比率」は、すぐに返さなければならない借金に対して、すぐに支払えるおカネがどれだけあるかという、短期的な支払い能力を表しているのです。日産の場合ですと、現金及び預金、受取手形及び売掛金(そこから貸倒引当金を引いたもの)、販売金融債権、有価証券までが当座資産と考えられます。

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