パナソニックの今期最終赤字は国内製造業ワースト記録に。テレビ敗戦、三洋買収のツケ重く
日本の製造業が、1年で計上した最終赤字(当期純損失)額のワースト記録は日立製作所の7873億円(2009年3月期)。今2012年3月期、この不名誉な記録はパナソニックによって塗り替えられることになるだろう。
2月3日、パナソニックが発表した業績見通しの下方修正は衝撃的だった。今2012年3月期は連結売上高が前期比8%減の8兆円、営業利益は前期比90%減の300億円。当期純利益で7800億円もの最終赤字(前期は740億円の黒字)に転落する見通しを表明したのだ。
これは昨年10月31日に下方修正した従来見通しをさらに売上高3000億円、営業利益1000億円、当期純利益で3600億円も下回る。今期2度目となる巨額の下方修正だが、11年4~12月期(第3四半期累計)までの窮状は、この予測ですら楽観的に映る。このため、東洋経済はさらなる業績下押し余地を折り込んでいる。
上記の下方修正の原因は、主に3つだ。1つはタイの洪水によりカーナビやデジカメなどの出荷が停滞したためで、今期業績ベースでは売上高で1300億円、営業利益で600億円の下振れ要因になる。
2つ目は、欧州経済危機や国内の地デジ需要消滅の影響が想定以上だったためだ。主力製品となる薄型テレビの今期販売予想は、1900万台(前期比6%減)から1800万台(前期比11%減)へ引き直した。テレビの単価下落にも歯止めがかからず、金額ベースでの11年10~12月期(第三四半期)売り上げ減少幅は前年同期比44%減と、7~9月期(第二四半期)の22%減収よりさらに悪化した。
デジタルカメラも同様に、今第3四半期の売り上げは前年同期比28%減収、第2四半期の同11%減収より下落幅が拡大。ブルーレイ・DVD事業にいたっては第2四半期まで前年同期比15%の増収を維持していたが、第3四半期には前年同期比25%減収へと一変してしまった。
部品から完成品までを垂直統合するパナソニックの場合、最終製品の販売がこのように落ちると、自社デバイス事業の業績も連動して落下する。会社計画によれば、デバイス事業の今期売上高は13%減の8100億円、営業利益は220億円の赤字(前期は330億円の黒字)に沈む見通し。とりわけシステムLSIなどの半導体事業は、売り上げの半分近くを自社製品向けに納入しており、工場操業度の低下等が響き薄型テレビに並ぶ赤字源となってしまっている。
3つ目は、三洋電機の「のれん代」(営業権)の減損特損だ。09年12月に三洋電機を子会社化した際、のれん代で5180億円、償却対象の無形固定資産で約4000億円を貸借対照表上に計上した。今回はそのうち2500億円を、民生用リチウムイオン電池と光ピックアップ事業の収益低下を折り込む形で減損させる。