パナソニックの今期最終赤字は国内製造業ワースト記録に。テレビ敗戦、三洋買収のツケ重く
会社側は昨11年10月、「三洋電機の減損テストを7月に行ったが、問題はなかった」(パナソニック)との“安全宣言“をしたばかり。わずか4ヶ月での豹変となる。財務担当である上野山実・常務取締役の説明も「(組織再編が完了する)今年1月にもういちど減損テストを行ったところ、将来価値の毀損額を入れることになった」と歯切れが悪い。
前回の減損テストからの6カ月で、リチウムイオン電池の事業環境が劇的に悪化した訳ではない。示唆しているのは、おそらくこの「減損テスト」にだれしもが納得できる客観性はないということだ。三洋買収の効果に疑問を呈するマスコミやアナリストの批判を受けたのか、あるいは減損で悪材料を出尽くし来期の業績回復を印象づける作戦に出たのか--。いずれにせよ、三洋減損は主観的な判断だったことには注意が必要だろう。
7800億円という最終赤字は巨額だが、東洋経済ではさらに当期純利益の下押しリスクがあると見ている。この赤字見通しにも関わらず連結で6100億円、単体で2180億円もの繰延税金資産が手付かずのまま温存されている。仮に全額取り崩せば1.5兆円に迫る危機的な最終赤字額となる。
会社側は繰延税金資産取り崩しの危険性に対して、現状では平静を装う。「当社は連結納税制度を採用していないため、(すでに繰延税金資産を取り崩した)プラズマ子会社や液晶子会社の不振が、他のグループ企業に波及することはない」(同社)との反論だ。しかし、パナソニック単体だけでも半導体、リチウムイオン電池、テレビなど複数の赤字事業を抱える。最終的な判断は、3月末の経理処理時での会計士の判断に委ねられるが、無傷でいるとは考えにくい。東洋経済はひとまず単体の半額である1000億円の取り崩しを想定し、最終利益を独自減額している。
歴史的赤字の最中、パナソニックはこれまで否定的だった経営責任の明確化についに踏み切った。6月27日付で、最高権力者の中村邦夫会長が取締役を退き、大坪文雄社長(=写真左=)が会長に就く。後任の新社長には津賀一宏専務(=写真右=)を充てる人事を発表した。これまで、パナソニックの社長適齢は60歳前後と見られており、津賀専務が55歳で社長に就任するのは異例のことだ。発表翌日29日の株価は11円(前日比1.5%)と小幅ながら上昇。旧体制の淘汰と、会社再建を託す若きリーダーの誕生を、株式市場はひとまず好感した。
(西澤 佑介、撮影:ヒラオカスタジオ =東洋経済オンライン)
《東洋経済・最新業績予想》
(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 純利益
◎本2011.03 8,692,672 305,254 178,807 74,017
◎本2012.03予 8,000,000 0 -850,000 -900,000
◎本2013.03予 7,600,000 150,000 50,000 20,000
◎中2011.09 4,005,198 47,599 -159,343 -136,151
◎中2012.09予 3,750,000 0 -40,000 -50,000
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1株益¥ 1株配¥
◎本2011.03 35.8 10
◎本2012.03予 -389.2 5-10
◎本2013.03予 8.6 5-10
◎中2011.09 -58.9 5
◎中2012.09予 -21.6 0-5
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