ソーシャルメディアは本当に役に立つか? 蒸気機関とキットカットの事例からSNSの可能性を問う!

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蒸気機関から発電機へ……本領発揮に必要なこと

 ソーシャルメディアを技術として考えたとき、思い出すのは、工場に電力という技術が普及したときの事例だ。あるときまで、工場の動力源は蒸気機関だった。これがやがて電気に替わるわけだが、蒸気機関を発電機に替えたところで生産性はあまり変わらなかった。

新しい技術にはコストもかかるし、人々の経験も少ない。全体として見ると、むしろ蒸気機関のほうがいいのではないかと考えられた時期もあった。

技術革新が起これば、それに合わせて、工場のパフォーマンスを最大化するレイアウトが模索される。

 だが、だんだんと電気を動力源とした工場の生産性は向上していくことになる。人々の経験が増していったこともあるが、大きかったのは、工場のレイアウトの変化だ。

蒸気機関にせよ、電気にせよ、動力源から機械へ力が送られる点では同じだ。しかし蒸気機関と電力では伝わり方が違う。蒸気機関の場合、その力は物理的なものであるから、蒸気機関に近い所での力が圧倒的に強く、遠くに行けば行くほど弱まっていく。

したがって、蒸気機関の時代の工場は蒸気機関の動力源を中心とし、機械は立体的なフロアに同心円を描くようにレイアウトされることになっていた。これに倣い、蒸気機関が電気に置き換えられた当初、発電機は蒸気機関のあった工場の真ん中に置かれたのだった。

だが、言うまでもなく、電力はそう簡単には劣化しない。発電機の近くでも、発電機から距離のある場所でも、配線さえされていれば、ほぼ同じ力を供給することができる。

蒸気機関の時代の工場のレイアウトは、電気の時代にはそぐわなかったのだ。まもなく、新しいレイアウトが生まれていく。発電機は工場の端へと移動していき、ついには、工場の外に配備されるようになる。

それでも電気の力は変わらない。工場のレイアウトは複雑な立体的フロアから平面のマス目状になり、機械は並んで配備されることになった。こうして、工場のレイアウトが変わることで初めて、電気の本当の力が発揮されるようになったのだ。

 

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