ソウル市長「弱者に力を与えるのが行政だ」

弁護士、社会運動家出身の朴元淳氏に聞く

――ところで4月13日の総選挙の結果をどう評価するか。与党セヌリ党は過半数に至らず、野党の「ともに民主党」が善戦、第三政党の「国民の党」が躍進した。

民心は本当に偉大だ。朴槿恵政権に対して、はっきりと審判を下した。国定教科書の問題、フェリー事故の真相究明と犠牲者への対応、日本軍従軍慰安婦に対して日本と拙速な交渉で結論づけたこと、MERS(中東呼吸器症候群)感染拡大への対応など、どれ一つとっても大問題であり対応が稚拙だった。現政権の支持率が下がってはいないが、選挙結果からすれば世論調査がおかしいということがわかった。

一方で各野党に対しても民心はイエローカードを突きつけた。最大野党の「ともに民主党」がきちんと仕事をしていれば、彼らは3分の2を超える議席を獲得できただろう。ソウル市では野党合計で議席数の3分の2超を確保したではないか。野党は権力争い、功績争いなどにうつつを抜かしている場合ではない。

――今回の選挙ではまた、もともと野党が強く、「ともに民主党」の最大の地盤と思われていた韓国南西部・全羅北道、同南道で敗北、同党から分離した「国民の党」が議席を席巻した。「ともに民主党」への不信感が強いことが示された。同党が地盤を不信感を払拭し、地盤を回復できる方法はあるか。

南西部の主要都市・光州市と全羅南北道は、1987年の韓国民主化以降の選挙において、その動向を推し量る羅針盤のような役割を常に果たしてきたと思う。1980年の光州事件(5.18光州抗争)以降、韓国の民主化運動を主導してきたのがこの地であり、軍事政権の流れを受け継いではいない二つの政権(金大中、盧武鉉)を作り出した。

とはいえ、光州・全羅道全体からの支持を受けていた政権にもかかわらず、それを背景とする与党としてきちんと仕事をしてきたのか。「光州精神」とも呼ばれ、伝統と正当性のある民主化精神をきちんと実践してきたのか。こんな本質的な疑問に対し、野党が応えられなければ支持者はそっぽを向くのは当然のことだろう。

――であれば、「ともに民主党」の重鎮を含め、彼らが全羅道の民心を得るために現地を訪問して、民心をつかむようにすべきだったのか。

光州市民は「自分たちのところに来て土下座すればいい」といった反応を見せたわけではない。光州市民が望む歴史的要求を、きちんと受け止めてくれているのかどうかという見方が重要だ。今回の選挙結果は、「国民の党」が「ともに民主党」よりうまく選挙戦を繰り広げた、あるいは本当の支持を得たためではない。「ともに民主党」に対する不信・不満ゆえの、代案としての選択だった。

支持率は雲のようなもの、当てにならない

――4月下旬に行われた世論調査では、「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)代表が「ともに民主党」の文在仁(ムン・ジェイン)前代表を押さえ、大統領候補としての支持率トップになった。朴市長は5位だったが。

支持率は雲のような存在、風のようなものだ。1年前には、私がトップだった。支持率や世論調査が民心とどれだけ乖離しているか、今回の総選挙を見てわかるのではないか。

――市長がソウル市の公務員を信じず、もともとの出身地盤である市民団体出身者ばかり信頼しているという批判もある。

市長になれば、1万7000人のソウル市公務員とともに改革を行うことは私の信念だった。公務員を敵に回して、成功できるものがあるだろうか。ただ、公務員はローテーションで職場と職責が定期的に動き、そのぶん専門家が育ちにくい。そのため、外部から人材を求めることで、専門家や新たな発想を市政に吹き込もうとしたというのが事実だ。特に課長、局長級に幅広い分野から集めた、外部からの人材を公務員にして配置した。

――大統領に必要な資質について聞きたい。

世界を見渡す洞察力とグローバルなリーダーシップ、国民とコミュニケーションできる能力、ガバナンスを構成できる能力などだ。

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