ソウル市長「弱者に力を与えるのが行政だ」 弁護士、社会運動家出身の朴元淳氏に聞く
――もともとソウル市の政策を、全国の自治体が追随する傾向がある。ソウル市内各区も、清渓川事業のような事業を行った。
清渓川事業をまねて、地方の河川でも似たような工事を行った。結果、本来は美しかった河川を台無しにしてしまった。私は逆に、たとえばソウル市北西部の川で、その景観を損ねているコンクリート護岸をすべて取り除こうと考えている。
その分、福祉に予算を回す。川にカネを捨てるような政策は避けたい。2015年にはソウル市は債務7兆8000億ウォン(約7800億円)を返済する予算をもっていたが、その債務圧縮の一部を延期し、4兆ウォン(約4000億円)分を福祉予算の拡充に回した。福祉団体がソウル市の福祉予算を26%から30%に引き上げてほしいと言ってきたが、私は34%に引き上げている。今月、ソウルに1000カ所目となる国公立の子どものための福祉施設が開園する。ソウル市民の生活の質は、かなりの程度改善したと言える。
100円の授受でも公務員は処罰すべき
――ソウル市内の区庁の都市管理局長が昨年、建設業者から50万ウォン(約5万円)の商品券を受け取り、解任された。これは、市長が作って「朴元淳法」とまで呼ばれる「ソウル市公務員行動綱領」に従った判断だった。「朴元淳法」が初めて適用されたケースだったが、「処分は行き過ぎだ」と元局長が訴え、大法院(最高裁)までもつれ込み、結局、元局長が勝訴した。局長は今年1月から復職しているが、これについてどう思うか。
50万ウォンの商品券を受け取ることは、政策決定に相当な影響を及ぼすことがある。ソウル市公務員行動綱領は、たった1000ウォン(約100円)でも受け取るだけでも処罰される。大法院では敗訴したが、それでもこの綱領を継続して掲げていく。最近、財閥の会長から相当な価値を持つ贈り物を受け取ったが、送り返したこともある。贈る側はいい気がしなかっただろうが。
大法院判決は理解できない判決だ。何も司法が「綱領」を評価せよということではないが、そこまで否定しなくてもよいと思う。判決は永遠ではなく、判事が変われば変わることがある。実際に変わったこともある。
――2014年に発生したセウォル号事件を追悼するために、光化門広場には犠牲者の遺族らが勝手に施設を設置し、今でもそれが撤去されていない。この状況に対して批判的な考え、特に保守層からの不満が多い。この事故は乗船していた修学旅行中の高校生など多くの犠牲者を出した事故だが、この対立についてどう考えるか。
行政は、公平か、あるいは公共性があるかといった基準から行動すべきだと考える。それから脱却できない人たちに生きる力を与える。これこそ、正義であり、行政がやることだと思う。
特に強調したいことは、このフェリー事故では、今でも9人が行方不明のままだということ。だからこそ、彼らの存在に思いをはせ、遺族にも寄り添い、そのことを市民の胸に刻むべきだと思う。
民主主義は多数決が原則だが、少数に対する配慮が重要だ。それゆえに、フェリー事故関連の追悼施設は、ソウル市の公務員が市民の安全を今後も守っていくという場でもある。国家の根本的な目標は国民の安全を保障することであり、ソウル市政の最優先順位にあるのも安全だ。
――今年4月の総選挙後の国会で、フェリー事故関連の議案はどうなると予測するか。
野党側が多数派になったことで、フェリー事故特別調査委員会は今後も続くため、真相に迫ることができるだろう。そのための予算もきちんと確保するべきだ。ハワイの真珠湾記念館は、日本による真珠湾攻撃を記憶しようと沈没した戦艦アリゾナを引き揚げることなく、座礁したままの形で記念館を設立した。私が責任者であれば、フェリーを引き揚げて船体の3分の2ほど海に沈めた状態にして水上記念館として設置してみたい。
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