「逆張りの人生」とは、実利を手にする人生だ

アマノジャク的人生を楽しもう

その間、私は35歳からおよそ10年間、マイクロソフトの社長を務めた。そして、2000年に社長を辞した理由の一つは、「誰もが大声で『IT』と叫び出したこと」だった。時はITバブル絶頂期。「世間がIT一色に染まったから、ソフトウェア会社の社長を辞める」という発想は、逆張り以外の何物でもないはずだ。

もう少し、私の人生を逆回ししてみよう。

私の逆張り志向は、少年時代からの筋金入りだ。小学5年から中学3年までの間、私はクラスの議長だった。仕事はホームルームの司会。クラスメートの意見を自分の思う方向に先導する特権はあっても、具体的な責任はない。実際に人をまとめ、決めたことの責任を取るのは学級委員長の役割だ。私は面倒なことを避けつつ、自分の欲求を満たす術をすでに身につけていた。同じように目立ちたがりの子どもでも、順張りタイプは間違いなく委員長を目指すだろう。

1955年生まれとは?

本記事は『これが「買い」だ : 私のキュレーション術』(新潮社)からの転載です(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

さらに、生まれた年まで遡ってみる。私は1955年生まれである。自慢じゃないが、この年の逸材輩出率は高い。ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズをはじめ、フランス大統領だったサルコジ、俳優のケビン・コスナー、ゴルフのグレッグ・ノーマンなど、錚々たる顔ぶれだ。日本人では、亡くなった中村勘三郎と坂東三津五郎、明石家さんまや千代の富士、世界選手権10連覇を果たした競輪の中野浩一もいる。残念ながら麻原彰晃も55年生まれだ。

とくにIT業界の立役者が多いことは特筆に価する。

グーグルを育てたエリック・シュミット。ワールド・ワイド・ウェブの考案者であるティム・バーナーズ=リー。少し視野を広げて前年の54年を見ると、ヒューレット・パッカードのCEOだったカーリー・フィオリーナやサン・マイクロシステムズの創立者スコット・マクネリらがいるだけだが、現在のネット社会はこのころ生まれた人間がつくったのである。

彼らが20代だった70~80年代、「IT」を声高に叫ぶ人間など一人もいなかった。にもかかわらず、彼らは値上がりなど期待できない玉に人生を賭けたのだ。私の逆張り志向が生まれつきなのも、ご理解いただけるだろう。

長い目で見れば、アマノジャクが得するケースは、じつは意外に多いのである。

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