業界規模が大幅に縮小しているにもかかわらず、優れた戦略で成長している企業がある。地味な業界であるうえに市場が縮小しているため、この業界には「未来がない」、「衰退している」などと判断しがちだが、けっして一緒くたにみてはいけない。こうした業界にも「成長企業」は存在する。その事例を紹介する。
ピーク時の3分の1まで縮小した宝飾品市場
今回紹介するのは、宝飾品業界。経済状勢の変化や人口減少を受けて、この20~30年間で3分の1以下にまで国内市場を縮小させてしまった。1980年代後半のバブル景気。1989年12月29日日経平均株価が3万8957円の最高値(ザラ場)をつけるなど、日本全体が好景気に湧いた余波が残っていた1991年に、宝飾市場の規模は3兆円を超えていた。
しかし、バブル崩壊後はぜいたく品とされるジュエリーの需要を冷え込ませ、市場は縮小を余儀なくされた。消費増税(8%)前の駆け込み需要で、市場全体が前年より増加した2014年でも業界全体の売り上げは9726億円(矢野経済研究所調べ)。ピーク時の3分の1以下に過ぎない。
「市場が3分の1」。これは極論すれば、売れていた商品の値段が3分の1に下がるか、値段が変わらないにしても顧客の3分の2が市場から消えてしまった状態だ。市場がこれほどまでに急落し倒産や廃業が続出する業界に、成長企業があるとは想像しにくいだろう。
この10年間、宝飾品市場の縮小ペースは緩やかになったものの、市場規模は2割以上減少している。しかし、この間にも業績を拡大させている宝飾品企業が存在する。それは、小売企業ではない。「不要論」がささやかれることの多い卸企業なのだ。
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