ナガホリは東京証券取引所2部に上場している宝飾卸企業だ。小売会社に対して商品を供給することを主な事業とするナガホリは、バブル崩壊後に売上減少で苦しんだ。
しかし、ナガホリはこの市場縮小に勝機を見出した。自社が苦しい環境の時は、競合も苦しい。あえて苦しい環境の中で投資を拡大することで、競合のシェアを奪う戦略に踏み切り、売上げを拡大させている。
もともと取引先から、同社の取扱商品の多さに定評はあった。2000年代に入ってからは、費用をかけて在庫を増やしただけでなく、新規の調達先を開拓することで商品ラインナップをさらに広げてきた。
逆張り路線でライバルは脱落
通常、市場環境が厳しいときは商品数を絞り込むものだ。同社はメーカーからの仕入れを増やすだけでなく、自社ブランド商品の積極展開も合わせて、あえて逆張り路線に出たのが。そして、同社の品ぞろえに追いついてこられない同業他社はどんどん脱落していった。
さらに体力が低下していた同業他社を吸収合併することで市場シェアを拡大させた。その一方で、卸売りにとどまらず、自社ブランドを活かした小売業への展開も始めたことで、事業領域を伸ばしていった。
その結果、消費増税の反動があった2015年3月期の売上高は202億3800万円。前期より7.5%減収だが、市場縮小の影響で苦しんでいた2005年3月期より15%も売上規模を拡大させた。
宝飾品業界は現状も厳しい環境が続いている。足元でも、消費増税の駆け込みの反動が続き、ボリュームゾーンである一般ミドル層向けの宝飾品需要が回復していない。ナガホリも2015年3月期は営業赤字(3300万円の赤字)に転落したが、好採算の自社ブランド品の増加など戦略強化して、2016年3月期には黒字回復(4億円の営業黒字)する見込みだ。
宝飾卸業界はバブル崩壊後、倒産撤退する企業が相次いだ。気がつけばライバルは減少し、数少ない「勝ち残り企業」になったナガホリにとって、現状は有利な経営環境ができあがっている。市場規模全体は減少した分、同社のシェアが拡大しているのだ。
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