オバマ・アメリカ・世界 久保文明、中山俊宏、渡辺将人著 ~米国社会の深層把握を助ける骨太の総括
評者 河野龍太郎 BNPパリバ証券経済調査本部長
イラク戦争で分断された米国社会。その再統一を期待された黒人大統領が4年前に誕生した際、多くの人はイデオロギー的な地殻変動が起きたと考えた。実際、最初の2年間には、健康保険改革など歴史的快挙をなし遂げた。しかし、2年後の中間選挙で民主党は大敗する。
本書は、大統領選挙を前に、オバマ政権の4年間を総括したものである。米国の相対的な重要性が低下したためか、世界各地で政治的、経済的混乱が頻発するせいか、日本では米国政治に関する骨太の報道が以前に比べ減っており、本書は米国社会の深層を把握する助けになる。各人の基調報告の後、討議が行われ、大変読みやすい。
大恐慌がニューディール政策をもたらしたように、世界的な金融危機が保守からリベラルに政治的重心を大きくシフトさせたと評者も当時考えていた。しかし、イデオロギーの変化は、有権者レベルでも、政治家レベルでもトレンドとしては起こってはいなかった。共和党保守派が最後までブッシュ前大統領を高率で支持したのと同様、民主党リベラル派は現在でも高率でオバマ大統領を支持している。
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