市況悪の逆風下での船出 ついに新日鉄住金が始動
すでに中国では、宝鋼との冷延・表面処理合弁が好稼働を誇っており、ブラジルでは持ち分会社であるウジミナスとの合弁も11年に増産。タイでは過半を出資する冷延事業が順調に伸びている。これに表面処理の完全子会社が加わり、主要国で日系メーカーの現地調達要請に応える。
自動車用に多く使われるのは薄板と呼ばれる鋼板。ホットコイル、冷延鋼板、表面処理鋼板は薄板3品と呼ばれ、加工を加えるほど高価格になる。この冷延や表面処理を海外で行おうというものだ。上工程の製銑(高炉)、製鋼、熱延までは日本の製鉄所で行い、ホットコイルを現地に持ち込み、製品に仕上げる戦略だ。
「ホットまでで品質を決めていく部分がある。技術流出防止という観点でもホットで工程をぶっちぎってしまったほうがいい」(新日鉄幹部)というように、上工程は品質を決めるノウハウの宝庫。製鋼で投入する合金鉄の種類や量や、熱延での冷却速度でも品質が変わるためだ。
「東南アジアは中国、日本、韓国の3国から1億3000万トン輸出されている地域。そこで輸出材と勝てる一貫製鉄所ができるのか」(新日鉄幹部)と消極的になる理由は多い。
海外高炉新設、そしてコスト削減効果の大きい国内高炉の休止は困難としても、海外シフトが進む下工程では国内が余るため、まずはここから削減が検討されそうだ。「七転八倒して、それでもダメなら」(友野社長)と厳しい判断も覚悟する。
ポスコなど韓国勢を再び圧倒できるのか。「最強」奪回へ日本の底力が試されている。
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(本誌:山内哲夫 撮影:今 祥雄 =週刊東洋経済2012年10月6日号)
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