市況悪の逆風下での船出 ついに新日鉄住金が始動
増える韓国材 存在感増すポスコ
ウォン安、低い税率、安い電気代、環境面の負担の軽さ、人件費の安さもあり、コスト競争力で韓国材の優位な状況が続いているのだ。
特にポスコの存在は強力だ。国内で独占的な地位を利用し高い利益率を確保し、海外で攻勢に出ていた。
ポスコの粗鋼生産は新日鉄と同レベルだが、これを二つの巨大製鉄所で生産する。新日鉄は五つの製鉄所に9基の高炉が分散している。新たに住金の3製鉄所、高炉5基が加わるが、これをどう効率化するかが成否を分けそうだ。
日本勢が危機感を強めたのが、日産自動車のタイ産マーチの登場。2010年に日本に逆輸入された低価格車だ。日本勢のお家芸であるハイテン(高張力鋼板)は使わず、低コストを実現したが、その鋼材の半分以上をポスコ材が占めたからだ。
国内での侵食も顕著になった。ポスコは神奈川や愛知、福岡などに鋼材加工工場を設置、自動車メーカーの厳しい納期にも対応を始めた。
鋼材の取引形態は店売り(汎用品)とひも付き(メーカーとの直接契約)に分けられるが、このひも付きへの侵食が始まったのは脅威だった。
メリルリンチ日本証券の榎本尚志アナリストは指摘する。「電気代や労務費、外注費など円ベースのコストが問題。これが円高が進む中、日本勢とポスコら韓国勢とでトン100ドルの差ができてしまった。ホットコイルがトン600ドルという世界ではこの差は大きい」。
これが収益性の差となり顕在化。日本勢が赤字に陥る中でも、ポスコは利益を上げ、明暗を分けた(図)。