一日の予定が終われば夜の付き合いが始まる。「映画『ロスト・イン・トランスレーション』で有名なパークハイアット東京のバーに行きたい」「渋谷駅前のスクランブル交差点を見てみたい。信号が青に変わると一斉に歩行者が動く姿をネットで見て驚いた」「梅酒のおいしい居酒屋に連れてってほしい」「秋葉原のメイド喫茶を体験したい」「カラオケに行きたい」など、彼らの要望も様々だ。
一日の終わりの飲み会では、その日に抱いた日本への疑問を明らかにしようと、次から次へと質問が始まる。「なぜ日本人は英語を使う機会が少ないのか」「高齢化の対策として移民を受け入れないのか」「なぜ日本人は全員がルールを守れるのか」など、答えにくい質問に困ってしまった。
彼らの目から見ると、米国、欧州、南米とも大きく違う日本の独特の姿は、新たな気づきや発見をもたらしてくれるようだ。
やはり際立つのは「サービスの質」
そういった中で実際の日本を体験したハーバード生たちから多くの支持があったのは、日本のサービスの質の高さだ。
例えば、企業訪問で訪れたJR東日本テクノハートTESSEI(東京・中央)。東京駅での停車時間である7分間に、新幹線の全車両の清掃を担当する会社だ。車内のゴミを集め、忘れ物のチェック、床掃除と、すべての清掃作業を7分でこなす。まさに職人技だ。
そんな細かい作業を短時間で仕上げる清掃の様子をホームで見学し、ハーバード生たちは驚いてばかりいた。
ほかにも、食事代の2割にのぼるチップを払わなくても気が利く飲食店、昼食時での無料のご飯のお代わりなど、日本人にとっては当たり前が彼らには新鮮だったようだ。
日本の質の高さの実感には、旅を主催した日本人学生の細やかな配慮も影響している。
計15カ所にも及ぶ訪問先との調整に加え、行き先の近くで大人数用の食事場所を確保。参加者のベジタリアン(菜食主義)やぺスクタリアン(肉は食べないが魚は食べる菜食主義)、ハラル(豚を食べないイスラム教)などの希望に合わせて、食事、駅弁を用意する。公共交通機関で移動しやすいようにパスモを事前に買う、帰国便は羽田か成田かを全員分を把握し、飛行場まで送り届ける。飲み会を盛り上げようと樽酒を注文し、旅の思い出にとケネディスクールのロゴを印刷した酒枡を用意する……
旅行代理店さながらの働きぶりだが、そういった細かな配慮も、日本人学生が企画する旅だからこそできた特長といえるだろう。