イオン、「4期ぶり増益」でも消えない根本不安 低迷するGMSのテコ入れが急務

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一方、回復が大きいのが、SM・ディスカウント事業だ。55億円の営業赤字から211億円の黒字に転換。マルエツやカスミなど、首都圏有力スーパーを傘下にしたユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスの連結効果も大きいが、全国で展開する各マックスバリュも軒並み回復した。さらにイオンが成長分野と位置づけるドラッグ・ファーマシー事業も、相次ぐ買収効果などで躍進し、営業利益は前期比2.6倍の185億円と伸びた。

安定した稼ぎを出しているのが、イオンフィナンシャルサービス中心の金融(総合金融事業)と、イオンモール中心の不動産(ディベロッパー事業)である。営業利益は金融が前期比3.7%増の550億円、不動産が同6.5%増の450億円。この2トップで営業利益の6割を占めており、今やイオンを支える収益柱だ。

逆にいえば、GMSが不振でも営業利益を補うことが可能なほど、ポートフォリオ戦略がうまくいっているとも言える。だが、主力のGMSが復活できなければ、小売り企業として本当の復活ではない。

苦闘ぶりが透けてみえる連結最終利益

本業のGMSは高齢化対応のほか、人手不足など、流通業界共通の課題も抱える(写真は4月1日の入社式)

連結の最終利益を見ると、その苦闘ぶりが透けて映る。

連結業績では、営業利益や経常利益までの2ケタ増とは一転し、最終利益が前期比85.7%減の60億円と大幅減益になった。繰延税金資産取り崩しや店舗減損なども響いたが、好調な金融や不動産会社への出資比率がいずれも50%程度と低く、最終損益段階で少数株主利益の流出があるのだ。

逆に業績が厳しいイオンリテールや赤字が続くダイエーは、イオンの完全子会社であるゆえ、そのまま最終損益に反映されるために、最終利益を一段と押し下げてしまった。

焦点のGMS事業について岡崎氏は、「粗利率が第4四半期から大幅に向上している。手応えを感じている。今期は粗利率を上げながら、客数も上げていく」と断言。改装投資に引き続き力を入れていく方針だ。5月には、かつてダイエーを象徴した「ダイエー碑文谷店」(東京・目黒)の営業も終了し、年内にもイオンスタイルとして生まれ変わる。

片や流通の一方の雄である、セブン&アイ・ホールディングスが鈴木敏文会長引退を巡って大揺れの中、イオンの人事はそれほどの大きな波乱もなく、経営体制は安定的だ。岡田社長がトップを務める間、GMSのテコ入れなどで、どこまで成果を出せるか。残された時間は多くない。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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