鈴木敏文氏が打ち立てた三つの金字塔
セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長が突然の辞任を表明した。4月7日の取締役会で、鈴木氏が提案したセブン-イレブン・ジャパンの井阪隆一社長を交代させる人事案が成立せず、信任を得ていないという判断からみずから退任を決めた。
一連の騒動をめぐり、鈴木氏について「独裁だ」「老害だ」「晩節を汚した」などという批判とともに「創業家との確執があった」「フランチャイズオーナーとの争い」などという見方もされている。そのような声が出てくるのは仕方がない。その評価にも一定の真実はあるに違いない。しかし、その批判は他の記事に任せる。
鈴木氏にはセブン-イレブンをコンビニ業界のナンバーワンに育て上げてきた功績がある。そのカリスマが最前線を去る今、鈴木氏がいったいこれまで何を残してきたのかを改めて振り返っておきたい。
いわゆる鈴木氏の、小売業における現代的な成果とは次の三つに集約される。
この3つの金字塔を順に解説していこう。
鈴木氏は1963年、イトーヨーカドーに中途入社し流通業キャリアをスタートした。その当時は、チラシに商品を載せればすべてが売れた時代で、戦略とは無縁だった。拡大主義と、そして、モノをとりあえず売ることが正解だった。
1960年代の高度成長期は、日本の産業を強くした。ただ、それと同時に、高度成長期あたりから、個人商店の集まりである商店街は生産性がきわめて悪化していた。そのころから大手資本の大型店の進出反対運動が起き、商店街側との争いが活発化していた。当時、鈴木氏が地域の商店街と話し合いをしても、進出しないようにただ反対されるだけだった。
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