それまで、仕入れは「相対性」の世界だった。これよりも、あの商品が売れる。それならば、売れる商品をたくさん仕入れよう。そうではなく、鈴木氏は仕入れを「絶対性」に置き換え、データから何個の販売が可能かを追求しようとした。
他に先駆けて1982年にPOSシステムを導入した。売れ筋を見つけるだけではなく、「絶対性」を目指す同社にとってPOSは、どのような売り方で最大にさばけるかを検証する武器だった。当時の資料を読むと、POSデータを分析し、売れなかった理由を希求するさまが描かれている。
POSはデータ主義ではなく顧客主義に徹した結果
巷間に流行するビッグデータも、仮説と検証を繰り返さなければ使えない。その意味で、同社のPOS導入はデータ主義の結果というよりも、データを活用し、顧客主義に徹した結果だったように思う。
なお、POSデータを活用し、店の売り上げや各アイテムの販売数のみならず、在庫を「見える化」したのもセブン-イレブン・ジャパンが嚆矢だった。また、功罪はあるとはいえ、コンビニエンスストアにならぶ3000~3500の商品の大半が入れ替わるといわれるが、それもPOSデータと直結していた。
在庫の多さは、損益計算書ではなく、キャッシュフローを直撃する。在庫の改善は、通常の感覚では当然だが、アメリカの小売業では、倉敷料が安いため、大量にストックするのが当時はむしろ当然だった。さらにアメリカは歴史的に、日本よりも商品のライフサイクルが長い。鈴木氏は、日本における生活者として普通の感覚で考え、そして在庫の徹底的なスリム化を目指したのだ。
セブン&アイは2015年11月に「オムニセブン」なるサービスをはじめた。これは、グループ各社の商品をネットから買えるサービスで、なんと180万点もの取り扱い品数とする。物流ルートも独自システムを活用し、短時間・短距離を実現させた。物流の配送効率を極限まで高め、通常の配送量の数倍を目論む。寿司などの商品はなんと積載の30分前に調理する。
これは、もちろんネット販売強化の一環だ。買い物弱者の救済にもつながるし、また多様化する消費者にワンストップで商品を提供しようとする試みでもある。
オムニチャネルでは、消費者に、店舗の違いを意識させず、またリアル/ネットの垣根なく、商品を提供する。それは、全国の消費者に、ただただ大量の商品を与えるのではない。もちろん、プライベートブランドの拡充を努めているが、同時に、地域限定商品の劇的な拡充を目論んでいる。
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