この「ボーンシリーズ」もそうだが、最近、映画のシリーズものが増えている。『スパイダーマン』『バットマン(ダークナイト)』『アベンジャーズ』。そして12月には『007』も公開を控える。シリーズもののよい点は、失敗が少ないということである。名門映画会社であるMGMが経営悪化に陥ったように、1本当たりの製作費用は年々増加傾向にあり、失敗は許されない状況。そのため、ホームランを狙うというよりも、安定的なヒットを目指すようになった。
加えて、アメリカでは子供が親と一緒に見に行くことが多く、ヒットを生み出すなら子供に人気があることは外せない。その結果として、シンプルな映画になっていくことになる。前回『バイオハザード』で説明したような、いわゆる「R指定」はなるべく避けるようになりつつある。ドル箱である子供が見ることができなくなり、それだけ、観客動員数が減るからである。
米国では、「とがった映画」を作りたい製作者は、最近ではケーブルテレビの業界に流れ、良質なドラマを作り始めた。個人的に好きなのは『24』『ER緊急救命室』『デスパレートな妻たち』『Sex and the City』『CSI:科学捜査班』などなど。ケーブルテレビの場合は、1本1本、映画のように買うわけではなく、全体としての契約となっていることから、 “とがった”作品を製作することができるのである。
地上波テレビの場合は、特に視聴率が重要になってくるので、一般大衆に受けるような内容とコストの削減が一層進んでいる。このように媒体の性質によって戦略や作品が分かれてきている。映画はBSのほうにシフトしているようである。
一方、日本では、テレビの番組を映画化させる戦略をとるようになった。『踊る大捜査線』『海猿』『仮面ライダー』がそれに当たる。テレビで人気化したものを映画化すればテレビでの固定ファンが付いてくる。事前のリスクヘッジが可能なのだ。
筆者のテレビでの映画解説の決め文句は「映画は2時間の夢」である。個人的には映画は、いつも新鮮で刺激的で、夢を与えるものであってほしいと思ってはいるが。
9月28日公開
しゅくわ・じゅんいち
博士(経済学)・映画評論家・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・ボランティア公開講義「宿輪ゼミ」代表。1987年慶應義塾大学経済学部卒、富士銀行入行。シカゴなど海外勤務などを経て、98年UFJ(三和)銀行に移籍。企画部、UFJホールディングス他に勤務。非常勤講師として、東京大学大学院(3年)、(中国)清華大大学院、上智大学、早稲田大学(5年)等で教鞭。財務省・経産省・外務省等研究会委員を歴任。著書は、『ローマの休日とユーロの謎』(東洋経済新報社)、『通貨経済学入門』・『アジア金融システムの経済学』(以上、日本経済新聞出版社)他多数。公式サイト:http://www.shukuwa.jp/、Twitter:JUNICHISHUKUWA、facebook:junichishukuwa ※本稿の内容はすべて筆者個人の見解に基づくもので、所属する組織のものではありません。
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