北方領土問題は結局どのように落ち着くのか

日本が行うべきことは、はっきりしている

美根:ソ連に対して放棄したわけではありませんが、終戦の際にソ連が占領しました。ソ連はさらに、北海道も占領したかったのですが、それはトルーマンが拒否しました。だから、占領は島どまりになりました。それをどうするかが北方領土問題です。サンフランシスコ条約に戻れば、千島列島の領有権は宙ぶらりんで、20の島はどこの領土か決まっていません。

木本:書面で放棄しているんですよね。ただ、そこにソ連の領土とするとは書かれていない。

美根:そうです。当時は冷戦が始まっていて、ソ連を助ける必要はない、だから宙ぶらりんで構わないという態度にアメリカもなったのです。ただ、現実は、ソ連が占領しているという事実はあるけれども、法的にそれを認める必要はさらさらない。千島列島はどこのものかは決まっていない。アメリカも知らん顔をしています。

木本:だからこんな難しいんですね。

美根:従って出発点に戻れば、千島20島の権利をソ連が要求できるかということが第一の問題。ただ、ソ連は戦争の結果だから、法的にも認めろという立場。歯舞色丹もそうなる可能性があったが、これは「返そう」と言ったということです。

木本:日本は第2次世界大戦に負けて、戦争の末期にソ連が侵攻してきたじゃないですか。世界はそのことを非難しなかったんですか。

アメリカの玉虫色な態度が混乱に拍車をかけた

美根慶樹(みね よしき)/平和外交研究所代表。1943年生まれ。東京大学卒業。外務省入省。ハーバード大学修士号(地域研究)。防衛庁国際担当参事官、在ユーゴスラヴィア(現在はセルビアとモンテネグロに分かれている)特命全権大使、地球環境問題担当大使、在軍縮代表部特命全権大使、アフガニスタン支援調整担当大使、日朝国交正常化交渉日本政府代表を経て、東京大学教養学部非常勤講師、早稲田大学アジア研究機構客員教授、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹などを歴任

美根:混乱した世界でしたから。

木本:しこりは残っていないのですか。

美根:朝鮮半島が南北に分かれているのもそのしこりのひとつです。当時のアメリカは、朝鮮半島と中国をどうするかで頭がいっぱいで、寒い氷の国で、ソ連が何かズルいことをしているのは知っていましたが、そこまで手が回らず、大ざっぱな対応しかできませんでした。先ほども言いましたが、北海道の一部に関しては、はっきりと拒否したけど、千島に対してははっきりと言わなかった。

木本:アメリカを含む他国は、「ソ連さん千島から退けよ」とは言わなかったと。

美根:言いませんでした。

木本:北方領土返還の交渉にその影響はないんですね。ソ連が勝手なことをしたという。

美根:千島列島を占領した事実は認めるけれど、法的に認めるのは別問題ですから。アメリカもズルいところがあり、ルーズベルト大統領は戦争中、別のことを言っていました。連合国が勝ったら千島はソ連に引き渡してもいいと言っていたんです。ソ連が早く対日参戦するのをノドから手が出るほど欲していたからです。何を言っても降伏しないだろう日本に、アメリカ軍の犠牲を増やしたくなかったのでしょう。

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