楽園企業の「ホウレンソウ禁止」がヤバすぎる 「社長室の隣に勝手にトイレを作る」って…

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「ホウレンソウ禁止」の本当の狙いはどこにあったのか。山田氏が筆者に語った印象的な言葉から探りたい。

ホウレンソウ禁止だから社員は自分で考える

(山田語録1)「『ダメな上司』ほど、部下を管理したがるもんや」

そもそも、「『ダメな上司』ほど部下を管理したがる」と山田氏は言う。「上司に話すだけで、部下は萎縮する。だからホウレンソウは『管理の始まり』なんや。どれほど奇抜なアイデアも、上司に『バカなことを言ってる場合か!』と叱られたくないから。部下は本音の5分の1も話さなくなる」

一方、中小企業は他社には考えつかない、突拍子もないアイデアこそが生命線。ホウレンソウで社員を萎縮させては本末転倒だから禁止、というわけだ。

(山田語録2)「『嘘をついてもエエぞ』と言われると、人はなぜか真面目になるもんや」

「『嘘をついてもエエぞ』と言われると、逆に、日本人は真面目になる。ホウレンソウなしだと、『(会社は)自分を信頼してくれている』と考えるからや」

一方、「嘘をついたらヒドイ目にあうぞ」と脅かす大企業の管理主義は、子供がいくつになっても口うるさい母親の行動パターンを、社会人相手に続けているのと同じ。だから、山田氏はそれを「子ども扱い」とバカにしていた。

(山田語録3)「管理しないほうが人は自分の頭で考えて、よく働くんや」

ホウレンソウを義務づけられると、社員はその分だけ、「課長や部長もOKしたじゃないですか」と、責任転嫁する余地も広がる、と山田氏は指摘する。

「それだと、社員一人ひとりの問題解決力や判断力は、いつまでたっても育たない。ホウレンソウがないからこそ、自分たちの頭で考え、行動し、その結果を自分なりに分析できる『プロ社員』に近づけるわけや」

「指示待ち社員」が1万人いる会社より、自分で考えて動く「プロ社員」が1000人いる会社のほうが儲かる。ホウレンソウ禁止は、そういう「人を育てる」ための大きな戦略のひとつだったのだ。

「管理したがる上司」と「任せきることのできる上司」、そして「指示待ち社員」と「自分で考えて動くプロ社員」――。あなたの会社と、あなた自身はいったいどちらだろうか。

荒川 龍 ルポライター

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あらかわ りゅう / Ryu Arakawa

1963年、大阪府生まれ。『PRESIDENT Online』『潮』『AERA』などで執筆中。著書『レンタルお姉さん』(東洋経済新報社)は2007年にNHKドラマ『スロースタート』の原案となった。ほかの著書に『自分を生きる働き方』(学芸出版社刊)『抱きしめて看取る理由』(ワニブックスPLUS新書)などがある。

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