米国の「有給取り放題」は、機能しているのか 実施しているのはたった3%だった
アメリカのエージェンシー(広告代理店)業界では、有給休暇を取り放題とする制度が流行している。
IT業界が発端となるこの制度は、従業員のライフスタイルを尊重しながらも、任せた仕事はきっちりとこなしてもらうことを前提とした、ワーキングカルチャーの変化による産物だ。また、こうした大盤振る舞いのルールは、シリコンバレーで働く人たちへの気前の良い「特典」にもなっている。年々、同地では才能ある人材を確保することが難しくなっているためだ。
しかし、この「有給取り放題」制度にも悪い側面はある。
「有給取り放題」制度の問題点
同制度を実施しているエージェンシーに勤める中堅マネージャーは、彼より勤務期間の短い社員が、彼と同じくらいの有給を取得していることに対し、怒りで煮えくり返りそうだと話す。「欲張りだとか、器の小さい人間だと思われるので、絶対に口には出せないが、有給は仕事を担ったことへの報酬であり、そうであるべきだ」と某中堅マネージャーは指摘する。
一方で、役員たちが悩んでいる問題もある。エージェンシーは人事で動いているということだ。グローバルエージェンシーであるハバス(Havas)の人材管理担当であるパティー・クリフォード氏は、「私たちの業界は顧客を中心として動いているため、無制限の有給休暇制度を導入することはとても難しい」と話している。
「通常では、顧客と契約を結ぶときに、専任スタッフや労働時間の詳細が決められる」と、クリフォード氏は付け加えた。エージェンシーが「有給取り放題」制度を実施していようとも、顧客にとってはそれは受け入れられないため、実際には機能しない制度になってしまうのだ。