米国の「有給取り放題」は、機能しているのか 実施しているのはたった3%だった
前述の中堅マネージャーは、有給を取得する罪悪感は企業から押し付けられるのではなく、自らが考えてしまうことだという。彼は誰が有給で休んでいるかがわかり、自ら取得した有給日数も把握しているのだ。中堅マネージャーは、「怠け者にはなりたくない」と話している。
ニューヨークに拠点を構えるエージェンシー、ウォーラス(Walrus)も、以前までは無制限の有給休暇制度を導入していたが、2015年末に廃止している。「特に新入社員たちにとっては、素晴らしい制度だったと思う」と、最高執行責任者(COO)フランシス・ウェブスター氏は語った。しっかりとした休暇制度を望む声は、若いミレニアル世代の社員たちの方が多かったという。「しかし、最終的には全体の従業員を混乱させてしまい、苦しめてしまった」。
ロサンゼルスのエージェンシー、72アンドサニー(72andSunny)では、創業当初から「無制限っぽい」有給休暇制度(常識の範囲内ならば、いくら有給を取得しても良い制度)を管理職以上の役職を対象に実施してきた。これは、上級社員たちの方が若手社員と比べ仕事量が多く、家族行事も多いことが理由だ。
この有給休暇制度をすべての社員を対象にする際、人事部長であるセデフ・オナー氏は上級社員たちが怒りださないかと、心配したという。なぜなら、この有給休暇制度は上級社員たちが長年勤めることで得た特典だからだ。「無制限有給休暇制度は社員への信頼が基になっていて、管理することを基に考えていない。社員全員が気に入っている」と、オナー氏は話してくれた。
「社員を信頼することは素晴らしい」
しかし、同じ企業内でも制度が異なる場合もある。エージェンシー、TBWA\シャイアット\デイ(TBWA\CHIAT\DAY)のロサンゼルス支社には、「有給取り放題」制度があるが、ニューヨーク支社にはない。支社ごとに有給休暇制度が異なっているのだ。
広報担当官によると、「支社が判断している」という。同社のロサンゼルス支社は、Netflixにならい、「有給取り放題」制度を選択した。ロサンゼルス支社に勤めるクリエイティブディレクターのリズ・レヴィー氏は、昨年とは比べられないほどの有給を取得しているが、この有給休暇制度のおかげで想像力や独創力が養えているという。「最高の創作意欲は、オフィスでは出てこない」と、彼女はコメントしている。
最終的には、「期限付きの有給休暇制度」が和解案として生まれるかもしれない。米ニューヨークのデジタルエージェンシー、ワーク&コー(Work&Co.)も「有給取り放題」制度の導入は見送っている。その代わり、有給休暇を20日間に設定し、さらにクリスマスの1週間を休みにするとした。
「社員たちを信頼することは素晴らしいし、私たちもそうしたい」と、人事部長であるケイトリン・リリー氏はコメントした。「しかし、私たちは全社員に休暇を取ってもらいたいと考えている。だからこそ、無制限の有給休暇制度を導入しなかった」。
Shareen Pathak(原文 / 訳:BIG ROMAN)
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