フジの手本は日経? メディア複合体への道
新聞業界の再編が進む一方で、放送業界にも変革の波がゆっくりと押し寄せてきている。衛星放送やインターネットなど多メディア化が進む中、年間2兆円規模のテレビ広告市場は今や頭打ち。一方で、2011年の地上波デジタル放送への完全移行に向けて、基地局構築などコストの重い状態が続く。視聴率によって広告市場のパイを争っているだけでは、収益の先細りは必至なだけに、放送局各社も事業の多様化が急務となっている。
「世界に通用するメディア・コングロマリット(複合企業)を目指す」。放送局の中でも、テレビを中心としたメディアグループ構築に積極的なのが、フジテレビジョンだ。傘下にディノスなどを擁する同社は、05年9月に従来「ねじれ関係」にあった親会社のニッポン放送を完全子会社化。昨年3月には扶桑社やポニーキャニオンを完全子会社化したほか、10月には広告会社4社を統合するなど、グループ内の“整理”を着々と進めている。
視聴率独走の「王者」フジテレビを動かしたのは将来への危機感だ。テレビ広告市場の低迷や新メディアの台頭……。地上波中心のビジネスだけでは業績成長どころか、現状維持も難しい。テレビだけに頼らず各メディアの制作能力や経営体力を向上するすべを探る中で、持ち株会社化構想が具体化してきたのだ。
フジテレビの背中を押すのが放送法の改正だ。従来、特定の会社が複数の放送局を傘下に持つことは禁止されていたが、地デジ移行に伴うコスト増に耐え切れない弱小地方局の救済等を視野に、放送法の改正案が浮上。特定会社による出資比率等は当初案から後退したが、改正放送法(4月施行)では特定会社が傘下にBS局のほか、地上波局を最大12局まで持つことが可能となったのだ。
海外では米ニューズ・コーポレーションのように複数のテレビ局や新聞社、ネット企業などを有するメディア企業は珍しくない。むしろ、将来国境を越えたメディア再編が活発化した場合、生き残れるのはこうした規模が大きく、体力のあるメディア企業だ。
フジテレビも改正放送法の施行に先駆けて3月半ば、10月にも認定放送持ち株会社に移行する計画を発表。詳細は明らかにしていないが、フジテレビやニッポン放送などのほか、扶桑社などを傘下に収めれば、形のうえではテレビ、ラジオ、出版事業等を兼ね備えたコングロマリットに仲間入りできる。フジテレビが40%出資する産経新聞社は直接傘下に入れないもようだが、各メディアとの連携を強化する可能性はある。
“圓城寺モデル”を研究
コングロマリット化構想は今に始まった話ではない。「米ウォルト・ディズニーの直近決算は増収増益、放送部門も大幅な増益となった。われわれもコンテンツを軸にしながら同様の成長を果たしていかなければ」。昨年5月末、07年3月期決算説明会に姿を現した日枝久会長はこう語った。前年の席でも「今後は『成長性の高い』とか『規模の大きい』と形容されるグループになっていかなければならない」と力説。日枝氏にとって巨大メディアグループの構築は、ライフワークといっても過言ではないのだ。