フジの手本は日経? メディア複合体への道
ネット・海外がカギに
フジテレビが自社のキャッチフレーズを「メディア・コンプレックス」から「デジタル・コンテンツ・ファクトリー(工場)」に変えたのは00年だ。それまで、地上波・BS・CS放送と3波を中心に事業拡大を図ってきたが、そこへ流すコンテンツの制作能力こそが地上波などのメディアの価値を左右すると考えるようになったのだ。
昨年9月には「コンテンツ工場」を体現する「湾岸スタジオ」が本社近くにオープン。総工費580億円をかけて造ったスタジオは地上7階建てで、八つの大型スタジオを擁する。分散していたドラマやバラエティ制作をここへ集約したほか、収録から編集まで一貫してできるようにポストプロダクション設備も完備。コンテンツ制作能力だけでなく、制作上での効率化も徹底する。
今後の注目は、ネットなどのデジタル展開と海外事業の拡大だ。
05年に開始した番組等のネット配信サービス「フジテレビ・オン・デマンド」では4月から自社サイト経由の配信を始めた。地上波番組と連携した独自コンテンツ等も強化させ、利用者の本格拡大に乗り出す。
従来、ネット配信といえば地上波番組をそのまま流すことに注目が集まってきた。が、フジテレビはむしろ地上波とは違うコンテンツを流すところにネットのうまみがあると見ているようだ。「テレビ番組で実際流れるのは膨大な素材の1~2割程度。残りを加工してネットなどで流せば、日経のように『魚の頭から尻尾まで』一つのコンテンツを余すことなく利用できる」(堺氏)。
海外展開ではカンヌで開かれる番組見本市に出展、映画や番組のフォーマット販売にも力を入れ始めた。
もっとも、一つの傘の下にメディア企業をただ並べるだけでは、海外大手に匹敵するようなメディア・コングロマリットに成長するのは難しい。ニューズがマイスペースを買収するなど、海外ではメディア企業がネット企業まで囲い込むケースも珍しくない。フジテレビもM&Aへ意欲を示しているが、たとえばミクシィやヤフーなど従来のメディアを超えた企業との資本・業務提携があってもいいはず。海外展開でも有力メディアとの提携等を通じて、フジテレビの存在感をさらに世界でアピールする必要がある。
子会社間の連携も課題だ。生い立ち上、産経新聞などグループ各社は独立色が強く、いざグループ体制を整えても相乗効果が出にくい可能性もある。最近でも、ポニーキャニオンがフジテレビ番組のDVDの販売権を獲得できず業績不振に陥るなど、独立性の尊重がかえってグループの足を引っ張るケースも浮上。独立性と相乗効果のバランスをとりながらの舵取りは容易ではない。
日本発のメディア・コングロマリットが世界へ雄飛するまでには、まだ時間がかかりそうだ。
(週刊東洋経済)
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