――1991年に大学設置基準を緩和してから、少子化にもかかわらず大学数が急増しました。学力レベルに問題のある大学も少なくありません。こうした大学に通っても学力は身につかず、まともに就職もできません。大学設置基準を厳しくして、大学数の増加を抑えた方がいいのではありませんか。
若者全体の人数が減少すれば、学力が低下する傾向があるのは否定できない。だからこそ、大学のレベルを維持・向上させるために大学の評価基準を厳しくするべきだ。
残念ながら「こんな大学があっていいのか」といったレベルの大学も存在している。財務内容、教育内容、学生や教職員の質が高等教育にふさわしいものなのか、様々な指標を基にチェックする必要がある。大学には私学助成金や国立大学運営交付金といった公的資金が投入されているので、一定のレベルを保たなければならない。
――存在価値の低い大学へ進むよりも、実業高校で実力をつけてから社会に出た方が充実した人生を過ごせるのではないでしょうか。実業高校についてどのようにお考えですか。
高校も大学も義務教育ではないので、進路の選択は個人の自由だ。しかし、高校は義務教育ではないとはいえ、進学率は98%を超えていて、義務教育のようなもの。実業高校を積極的に応援していきたい。実業高校で専門性の高い教育を受けて資格を取得し社会人になるのは意義のあることだ。
最近は「農業女子」が話題になっている。農業高校に優秀な女子が入学して活躍している。カリキュラムは物販、スイーツ加工など、まるで専門学校のような高度で多彩な内容だ。農業の6次元産業化(事業融合による新たな基盤づくり)にも貢献するだろう。また、実業高校に加えて高等専門学校(高専)にも期待している。地元の小・中学校生が目標とするような実業高校や高専を作っていきたい。
秋入学の推進は考えていない
――あらゆる分野でグローバル化が進んでいることを考えると、日本の大学も秋入学にするべきではありませんか。欧米と入学シーズンがずれているため、海外留学した日本人学生は就活で苦労しています。
今のところ、文科省として秋入学を推進しようという考えはない。春に入学するのは日本の文化だと思う。しかし、秋入学にチャレンジする大学が出てきてもいいのではないか。高校卒業後、秋までの半年間にさまざまな活動に取り組むのは有意義だろう。
東大や京大のような国立トップ校や早慶明、関関同立のような有力私大がチャレンジするのはいいと思う。文科省から秋入学導入の強制はしないし、妨げもしない。大学は義務教育ではないので、各大学の自主的な判断にゆだねたい。
――大学だけを秋入学にするから導入しにくいのではありませんか。欧米に合わせて、小学校から秋入学にすることはできませんか。歴史をひもとくと、最初は秋入学でした。大学の春入学が始まったのは1921年。小学校の実態的な春入学スタートは1892年です。秋入学といっても、元に戻すだけとも言えます。
日本社会全体が春に年度をスタートさせるシステムになっている。国や地方自治体は4月から3月までの1年間を対象に予算を編成する。企業の年度も春スタートなので、秋入学になると企業との連動に支障を来す。私立大学がチャレンジするのは自由だが、国として秋入学を推進することはない。
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