決着つかず延長へ ヤクルト買収攻防戦 交渉は二転三転

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ダノンのエマニュエル・ファベールCOOは「われわれは、人情がなく、数字とルールだけでビジネスする米国企業とは違う」と資本の論理を押し通すつもりはないと言う。が、TOBをにおわせながらヤクルトを攻めきれないのには、中国でのトラウマがあるはずだ。

攻めきれない理由はまだある。ダノンは、完全子会社化でなければ撤退というM&A戦略の原則を示している。その原則にのっとれば、ヤクルトにも100%取得のTOBをかけるのが筋。完全子会社化すれば文句を言われることもない。しかし、TOBの意向が報じられた今春以降、ヤクルトの株価は急上昇。同業と比べて株価は割高な水準にある。ダノンが100%取得でTOBをかけた場合、プレミアム3割なら7000億円もの巨費を要する。

一部のヤクルト販社とダノンが結び付くうわさも根強いが、「販社からアプローチはあったが、いっさい取り合っていない。ごく一部にすぎないし、経営に関する考え方が合わない」とダノン関係者は一蹴する。

実は、ダノンは好採算の乳児・医療用の健康機能性食品を優先事業としている。そうした中でヤクルトに7000億円を投じる意味は薄い。それでもヤクルトから撤退した場合、競合のネスレやペプシコがヤクルトと組む懸念もあり、株放出も難しい。

手詰まりなのはヤクルトも同様。ダノンへの拒否感は強いが、買い増しを止めるすべはほとんどない。ホワイトナイトを打診した国内企業からは断られた。海外大手なら資金力に不足はないが、先方がメリットを感じるかは微妙。そもそも、他社から余計な関与をされたくないというのがヤクルトの本音である。

今回の交渉でダノンのリブーCEOとヤクルトの堀会長が直接対話した形跡はない。膠着状態が動くとすれば、両社の絶対的トップが同じテーブルに着いた時になるだろう。

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