売れすぎスバルは一体どこまで拡大するのか 吉永社長が明かす新型インプレッサへの自信

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確かに、スバルの2015年は新型車を1台も出さなくても、過去最高の販売台数を記録したのだから、驚くしかない。当然、その背景には”スバル”のブランド力の高まりが見え隠れする。

『際立とう2020』という目標を掲げた理由

吉永社長は言う。

「『際立とう2020』とは、製品や販売といった個々の分野ごとに際立つのではなく、スバルというブランド全体が際立つことなのです。その第1弾がインプレッサの発表であり、今後のスバルの取り組み全体を際立たせていくスタート地点でもあるのです。

はっきり言ってしまえば、スバルは自動車メーカーの中では大きな会社とは言えません。だからこそ、スバルの特徴を見極めて、ブランド力を高めることにつなげていけるかが重要です。年間の生産台数にしても、今回の投資で年産110万台へと成長しますが、個人的には、最大でも120万台あたりが適した規模だと考えています。

生産台数をむやみに拡大しようとすれば、たくさん売れるクルマを作るしかなくなります。その瞬間に、今のスバルのビジネスモデルが壊れてしまいます。もし今が、自動車産業の黎明期であれば、500万台や1000万台といった大規模メーカーを目指してもいいと思います。ただ、すでに成熟した産業ですから、いたずらに生産台数を増やそうとすれば、中途半端になって今あるブランド力すら失いかねません。

一方で、その規模を守ろうとすると、すべての面で最先端を突っ走る体力はないわけですから、アライアンスを結ぶことでその点を補って時代に沿ったプロダクトを生み出していかなくてはなりません。

そう考えると、年間1000億円ほどの研究開発費が使えるようにしておくべきです。もしそれ以下だと、いくらアライアンスがあっても生き残れません。100万~150万台の規模を保ちながら、そこで得た利益を次の投資に注ぐのが理想と考えると、ブランド力が高めないと難しい。だからこそ、『際立とう2020』という目標を掲げたといえるのです」

最後に、新型インプレッサについての吉永社長の感想で結ぼう。

「アメリカ市場を重視していますが、『インプレッサ』については日本できっと人気が出ると信じています。このクルマに乗ったら、確実に『いいクルマだ』と感じていただけると思います。今、見ただけでも、ぐっとくるでしょう?」

実は、この言葉に驚きを隠せなかった。吉永社長は普段、記者の厳しい質問に対して、確実な言葉を選んで使うような人物だからだ。吉永社長は、満面の笑みで「私は、みなさんより先にこのクルマに乗っていますからね」といたずらっぽく語っていた。スバルが満を持して投入する新世代プラットフォーム採用の第1号を飾るインプレッサ。今年後半の市販が、ますます待ち遠しい。

川端 由美 モータージャーナリスト
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