ジェネリック薬品の性急な拡大は新薬開発に重大な影響も
ここ数年、「ジェネリック」という言葉は急速に人口に膾炙(かいしゃ)してきた。新薬の特許権は20~25年間保護されているが、それ以降、後発メーカーは開発費も特許料も支払わなくてよいため、低価格で医薬品を提供できる。かつては新薬の特許切れ後にゾロゾロ出てくるため、ゾロ品と呼ばれていたが、最近では有名俳優を使ったテレビコマーシャルなどの影響で、「ジェネリック」のほうが市民権を得ている。
医師に直接依頼する、カードを提示するなどの方法で、簡単に新薬と同じものが安価で処方してもらえる、と考える国民は多いだろう。
だが、そこには誤解がある。
先発品と同じではない
まず、特許権が切れるのは、先発薬の主成分に関してのみであり、それ以外の、薬剤の設計、製法など企業秘密として公開されていない部分が多い。主成分は、薬品の総重量のせいぜい数%程度。大部分は、主成分以外の賦形剤やコーティング剤などの添加剤だ。製造工程についても同様で、厳密にいえば、ジェネリック医薬品は、「新薬メーカーの開発した医薬品と寸分たがわぬ同じもの」ではない。
他の効能が後に追加されている先発薬もあり、後発薬にはその効能がまったく含まれていないものがあるので、注意が必要だ。
もちろん、使用されている添加剤は認可され、すでに他の医薬品での使用実績もある物質で、安全上の問題はない。臨床試験、製造工程のいずれにも新薬と同様に省令で厳しい管理基準が定められており、安全上の問題は新薬と変わらないという。
だが、それでも、本当に先発薬と同じ効果が得られるのか、という疑問は残る。ビーカー内での溶出試験や、人による血中濃度試験などの同等性試験は申請時に義務づけられており、薬品の添付資料にも記載されている。ジェネリックメーカー側は、先発品と差はないという。