――20年以上という年月に、渥美清さんの存在の大きさがうかがい知れます。
渥美さんという偉大な俳優さんと巡り会ったことはもちろんすばらしいことですが、一方でものすごく大変な面もありました。この時代に喜劇をやるなら誰なんだということです。なかなかこの人だ、というところまでは至らなかった。結果として20年が経ってしまいました。
『男はつらいよ』が終わり、ほかの作品のシナリオを執筆中も、『こんな時に寅だったらこんなことを言うだろう』という言葉が出てくる。そういう意味では念願がかなった、ということです。
劇場ではお客さんが大笑い
――山田監督が、小津安二郎の『東京物語』をモチーフに制作した『東京家族』はシリアスなドラマでしたが、今回はあの映画に登場した家族をコメディーとして再構築しようというアイデアに驚いたのですが。
『東京家族』の撮影現場に、お茶を飲んだり休んだりするテーブルがあるのですが、そこでの8人の会話がとても面白かった。『東京家族』はシリアスな作品ですが、休憩中のみんなの会話は笑いが絶えない感じで。時には山田監督も一緒になって大笑いをしていた。8人が非常に仲良くなって、『山田監督、今度は「爆笑家族」「崩壊家族」というタイトルで撮りましょうよ』なんて、冗談を言い合って盛り上がっていたんです。
――そんな冗談が現実になった。
それが山田監督の頭にずっと残ってらっしゃっていたんでしょう。次回作についての話を2人でしている時、当初は喜劇ではなかったんですが、撮影中に聞いた蒼井優さんの友人の身に起こった熟年離婚のエピソードを思い出して、この話でいけるんじゃないかということになりました。そして俳優さんにお声がけしたところ、皆さんも喜んでくださって、今回に至ったということです。
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