日本の電子納税は「時代錯誤」になっている

エルタックスの寒すぎる実態

 技術的にはICカード内の電子証明書を読み取る仕組みを、現代のWeb標準の枠組み内で実現する仕組みを開発すれば、電子申告だけでなく電子政府・電子自治体にかかるさまざまな問題が解決に向かうだろう。

一方、”税の電子申告”というテーマだけに絞るのであれば、電子申告に関しては個人が直接申告するのではなく、税理士を通して行うよう絞り込めば良いように思う。電子申告用にWindowsでしか動かないアプリケーションを開発し、メンテナンスを続けているが、これもなくした上で、税理士を通じて電子申告するための手順、データフォーマットを標準化。税理士事務所が内容を確認した上で電子申告を行う手順をシンプルに整備すれば、個人と紐付く電子証明書を扱う必要はなくなる。

個人で使っている人はほとんどいない

実際に電子申告を個人で実施している人は、電子申告の準備手続きの煩雑さ、必要機材の多さなどに驚いていることだろう。筆者自身、ここまで面倒な手続きが必要とは、実際に取り組むまで知らなかった。

統計では半分近い個人が電子申告を利用していることになっている。しかし、これは税務署を訪れて電子申告した例や、税理士事務所を通した数字が含まれており、実際に個人が自宅から電子申告している数字となると3%台前半にすぎないという。

その理由は今回取り上げた問題も含め、利用開始までのハードルが高い(=電子証明書取得やICカードリーダーセットアップ、対応環境の準備などの準備が複雑である)ことが理由として挙げられる。電子申告を実現する理由のひとつとして政府が挙げている「納税者利便の向上を図る」という目標が達成できていないことは明白だろう。

もちろん、政府もこの問題は承知しており、2017年からはICカードを必要としない新しい個人認証システムを導入する予定だった。しかし昨年、米内国歳入庁がハッキング被害に遭い、10万人分の納税データがロシアの組織に奪われる事件が発生。なりすまし申告の横行も指摘されている。結果として、現状の認証システムからの移行を決断しにくくなっているのだろう。

こうした現状に対してICカードによる認証システムを残したまま、問題解決する方法を模索する道はあると指摘する声もある。従来の公的個人認証サービスで使われているICカードに加え、NFC(近距離無線通信)での標準化、そしてWeb標準を決めている標準団体W3Cへのロビー活動を通じて、ブラウザ自身がICカードを用いた公的個人認証サービスい対応すれば、将来にわたってのサポートや、カードの互換性、利便性といった面での問題解決につなげることはできるからだ。

あとは、政府自身がどのように将来を見すえているかだが、その見通しが晴れているようには思えない。まだ、混乱は続きそうである。

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