“映画評論家”細野真宏が指摘 「興収2000億円から一歩踏み出すには」

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 タイミングよく受賞後すぐ公開された『釣りキチ三平』は普通に考えればお客さんが入らないわけがない。『おくりびと』に感動した人たちが「いま日本一有名なこの監督の最新作なら見たい」と足を運ぶはずです。配給元の東映も期待し239館という規模で公開しました。

しかし、結果は初登場11位でベストテンにすら入らなかった。ちなみに、同日156館で公開した『プリキュアオールスターズDX』は5位。『釣りキチ三平』は3日間の興行収入が6000万円に満たない数字で、計算すると1回当たり10~20人程度しか客が入っていない。いかに観客が監督や作り手を見ていないかということです。

あえて映画の正しい見方を言うと、作品だけでなく作り手を意識して「この監督や脚本家がどう作っているか」見る。『おくりびと』の現象からは、多くの人が話題性や表面的な“何となく楽しかった、つまらなかった”だけで動いてしまう現実が読み取れます。悲しいことですね。

映画は好きでも監督の名前を答えられる人は少ない。もっといえば、映画だけでなく漫画などもそうです。「作り手に対する関心」が極めて希薄になってしまった。致命的なことだと思います。徹底的に作り込んだものが、正当に評価される世の中にならないと手抜きが起きる。決していい作品は育ちません。

ただ、成功例もないわけじゃない。6月公開の『劔岳 点の記』は、木村大作監督が全国を回る宣伝活動を展開し、映画の魅力を自身の言葉で伝えていった。観客にもそれが届いて興行収入は20億円を超える勢いです。作り込んだ努力に結果が結び付いた例だと思います。

興収2000億再突破へ 本物志向への手探り

映画や漫画、アニメも含めた日本のコンテンツ産業自体が衰退しないように、観客の意識も変えていく必要があります。そのために、こだわりを持って制作に打ち込む監督や作品をきちんとマスメディアが伝えていくこと。そして観客も作り手に関心を持つことです。

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