“映画評論家”細野真宏が指摘 「興収2000億円から一歩踏み出すには」
映画を公開するタイミングも重要です。ドラマの話題性があるほどヒットの可能性も高まるので、制作期間は短くなる傾向がある。ドラマを映画用に広げる場合、多くの要素を加えるため、ストーリー構成に緻密な作業が必要となります。
しかし問題はスケジュールばかり先行してクオリティが追いついていないことです。作品のクオリティはいくらでも上げることができます。たとえば、『余命1ヶ月の花嫁』は脚本を12回も書き直したそうです。脚本家だけではなく、プロデューサーやスタッフなどの意見を集約して一つのストーリーにまとめ上げた。相当な手間がかかりますが、そこまでこだわればいい作品は作れるわけです。
半端な規模の作品では客を集められない
映画業界では二極化が進んでいます。東宝が圧倒的に独り勝ちしていますが、中小の映画会社は危機的です。4月にワイズポリシーという会社が破綻しましたが、同社のように洋画を配給する独立系の映画会社は、基本的にハリウッドの超大作を買えません。ワーナーやフォックスなどのメジャー会社に配給され、中小規模の映画しか買えない。
かつてアカデミー賞を受賞した作品は興行収入10~20億円は見込めると言われていましたが、今は5億円に達するかどうか。まして賞にも絡まない多くの半端な規模の作品は壊滅的です。メジャーの中には洋画不振を受け、邦画製作に乗り出す動きもありますが、ノウハウが乏しいので作る映画の出来は厳しいのが実情です。
作り手を見ない観客が映画界の発展を妨げる
日本の映画界を考えるうえで重要な例があります。昨年ヒットした『おくりびと』です。アカデミー賞外国語映画賞を受賞し、最終的に興収60億円を超える大ヒットになりました。滝田洋二郎監督は世界的にも評価され、日本でいちばん有名な監督になったわけです。しかしポイントはこの後です。