“映画評論家”細野真宏が指摘 「興収2000億円から一歩踏み出すには」
最近大ヒットした映画を思い浮かべてみると、大半はテレビドラマの延長線上で制作されたもの。実際、映画作品の多くにテレビ局が関与するようになったことで、その構造的不況の影響が映画界に波及している面は大きいといえます。
テレビ業界はネットの台頭などで広告収入が激減しています。既存のビジネスモデルの中で収益を確保したいと考えたとき、映画はドラマと非常に関係性がある。だから、「あわよくば映画化してヒットさせたい」となるわけです。
生き残るために効率的な仕組みを採用するのは当然だと思います。そうでない映画は知名度ゼロからスタートするので、大量のCMや広告宣伝が必要です。だからドラマの延長線上で映画を作ることは必ずしも悪いことじゃない。
では何が問題か。長い目で見ると、安易に映画化された作品の「期待と満足度のギャップ」は、ボディブローのように効いてきます。中長期的に自分の首を絞めることになるわけです。
そう考えると、最近のテレビ局の映画は厳しい。『花より男子ファイナル』や『ROOKIES』『相棒』などのヒット作は、映画を見慣れた人の評価と興行収入の乖離が如実に表れた例です。コストをかけてスケールを広げる基本は押さえていますが、あまりに多くの要素が「継ぎはぎ」されていて脚本の進め方に無理がある。優れた映画になるかどうかは、さまざまな要素を、リアリティを持てるように自然に美しく構成できるかに尽きます。
たとえば『容疑者Xの献身』は、それなりに映画としての出来はいい。テレビドラマの映画化として成立しています。ほかに『LIMIT OF LOVE 海猿』もそう。緊迫したシーンで長電話する場面は首をひねりますが、それ以外はうまく作られている。興行収入71億円とヒットしたのは、評価と実際の動員が比較的一致した例だと思います。