小さな組織を救うのは「眠れる」マルチ人材だ 主婦再雇用推進で明らかになった2つの課題
日本にはいまだに、約6割の女性が第一子出産前後に退職を余儀なくされ、労働市場から遠ざかってしまうという現状があります。しかし、人口減少が深刻化する中、恒常的な人手不足感を抱える企業にとって、こうした女性の活用こそ有効な手だてになるはずです。ところが実際は、離職期間が長い女性ほど仕事復帰への第一歩を踏み出しにくく、また企業側も離職期間の長い人材を敬遠しがちであるという事情もあります。
そこで2015年10月、福岡市のNPO法人「ママワーク研究所」を中心に私たちを含む5つの団体が共同で、いったん労働市場から離れてしまった女性たちが、人手不足に悩むベンチャー企業で再び働き始めるための道筋をつけるプロジェクトを発足させました。働きたいという気持ちを持ちながらも離職期間が長くなり、再就職のきっかけを逸している専業主婦にトレーニングを行い、企業で活躍できるようなスキルを身につけてもらおうという試みです。これは内閣府の「地域における女性活躍推進事業」の一つでした。
経理も総務も庶務も担えるマルチ人材
手始めに私たちは、ベンチャー企業の経営者、人事・総務管理者を対象にアンケート調査を行いました。回答を寄せてくれた63社のうち、設立10年未満の企業が55%、従業員が300人未満の企業が9割を占めましたが、88%もの企業が人的ニーズに対して満足感を得られていないということがわかりました。そして、約半数の企業がこうした人材不足を補うために、業務委託や派遣など多様な雇用形態を取り入れていました。働き方についても、半数が在宅勤務や時短勤務が可能であると回答しており、就労時間や場所に制約を抱える主婦人材との相性の良さを確認したのです。
創業まもない”小さな組織”で渇望されるのが、バックオフィスを支えるマルチ社員。少ない人数で効率よく業務を遂行するにあたり、経理も総務も庶務もオールマイティにこなせる人材が求められます。そこで、中小・ベンチャー企業で能動的にバックオフィス業務を担う人材を「戦略的総務人材」と定義することにしました。
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