小さな組織を救うのは「眠れる」マルチ人材だ 主婦再雇用推進で明らかになった2つの課題

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 トレーニングを終えた女性たちは、主婦人材の受け入れを前向きに検討している企業とのミートアップイベントに参加。これまでの経験や熱意を熱心にアピールしました。参加した企業からは「意欲が高い女性が多くて驚いた。採用も積極的に見当したい」という声が多く聞かれました。

受け入れ企業側の課題は

一方で、今回の一連のプロジェクトを通じていくつかの課題も見えてきました。こうした人材を積極的に受け入れたいという企業は多いながらも、なかなか進まないのはなぜなのか。私たちは企業に対して主に以下2つの課題を解決する必要性を感じました。

1. 離職期間が長い人材に対する見極めの難しさ

2. 勤務条件、勤務環境の整備にかかる負荷

1については、労働市場から遠ざかっている人材のスキルを不安視する声や、働く時間や場所に制限を抱えながら能動的に仕事をやり抜くことができるのかといった疑問が、少なからず聞かれました。でも、今回のプロジェクトのように、基本となるPCスキルや業務に必要な知識を座学で学んだり、実際に職場で数週間~数カ月の就労体験(インターンシップ)を行ったりすることでクリアできるのではないかと考えます。

また、「本人が働く意欲を見せていても、家族(特に夫)に反対されて突然辞めてしまうことがあるのではないか」という不安を漏らす企業担当者もいました。家庭の事情に介入するのは難しいものの、就労後も定期的に面談の機会を持つなどの手を打つことで、本人の意欲をサポートすることはできるでしょう。

2については、働く時間や場所に制約を抱える人材を活用するにあたって、どのような環境を整えたらいいのかという質問や、仕組みや制度を整えるのに金銭的・物理的負荷がかかるのではないかという不安の声が聞かれました。

こうした女性人材を活用するには、在宅勤務やリモートワークの体制を整えることが非常に有効であると考えます。本人以外の社員ともクラウドで情報共有することで、子どもの病気などで突発的に休むことになっても、業務の代替対応をスムーズに行うことができるし、在宅勤務を可能にすれば、限られた時間を最大限使って業務に注力してもらうこともできます。最近では、厚生労働省や自治体が在宅勤務(テレワーク)導入にあたっての助成金を出しているので、こうした制度も活用するといいと思います。

今回のプロジェクトはいったん終了となりますが、眠れる人材の活用に向けて一歩を踏み出す契機となったのは確かです。この結果をベースに、今後も主婦人材と企業の架け橋となるようなアクションを取っていきたいと考えています。

田中 美和 Waris代表取締役・共同創業者

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たなか みわ / Miwa Tanaka

一般社団法人「プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会」理事。1978年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、2001年に日経ホーム出版社(現日経BP社)入社。編集記者として働く女性向け情報誌「日経ウーマン」を担当。フリーランスのライター・キャリアカウンセラーとしての活動を経て2013年Waris設立。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』がある

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