トヨタにはできなかったホンダLOL戦略の威力

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縮小


 ホンダのインセンティブは基本、1000ドル以下。在庫解消等のために上回ることがあっても、他社に比べて最低にする。

現在、米国での“ホンダ・トゥー・ホンダ”は約55%だが、究極の目標は100%。LOLという存在のおかげで、ホンダは量的拡大やシェアに一喜一憂することなく、質を追うことに専念できる。

LOLの視点に立てば、ファイナンス事業も積極的にはなれない。

「販売金融はホンダの新車を買うお客へのサポートが基本」と近藤副社長。「80年代なんてほとんど現金販売。湾岸戦争のときに在庫が20万台近く積み上がったためリース販売も始めたが、他社のように自社以外の販売金融もどんどんやる、金融事業を拡大して利益を出すというスタンスとは一線を引いている」。

金利ゼロキャンペーンもしない。「ゼロにすれば買いやすいことは確かだが、本来、買えるお客に売ることにならない。もっと厳しく言うと、お客さんを不幸にするのではないか。だから頭金を少し下げたりはするが、その程度」(北條陽一・ホンダ取締役事業管理本部長)。

01年度に比べ、トヨタの販売台数はピークで1・5倍、ホンダは1・4倍に増えた。ところが金融子会社の有利子負債を比べると、ホンダの2・0倍に対してトヨタは3・3倍に膨張した。現金を持たない消費者にもクルマを売れる“打ち出の小づち”販売金融は、米国自動車バブルの片棒を担いだ。それを謳歌したのがビッグスリーでありトヨタだとしたら、最も距離を置いたのがホンダだった。あと数年、急激な市場回復は期待できない。それでもLOL戦略さえ守っていれば、少なくとも既納客を失うことはないだろう。ホンダの真の強みは、その泰然さにある。

みんなで決めていた引き際のタイミング

ホンダはむやみにボリュームを追わないため、設備投資に関しても極めてコンサバティブな会社だ。合言葉は、販売を上回る生産なし。「長期投資は自社キャッシュフローの範囲内でやる。これを過去何十年と続けてきた」(北條取締役)。

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