トヨタにはできなかったホンダLOL戦略の威力
ホンダ継続率100%の理想郷
LOLは00年ごろにホンダ社内で生まれた。「要は、ホンダを買ったお客に次もまたホンダを買ってもらう--つまりは代替率を上げようという取り組み、それがLOL」。近藤副社長は説明する。免許をとってから以後ずっとホンダ一筋でお願いしますというわけだ。
「ホンダも昔は極端な話、シビックとアコード、それだけだった。次はピックアップに乗りたいなと思っても、ホンダにない。だから代替率も40%くらいだった」(近藤副社長)。1990年代後半からSUV(スポーツ多目的車)「パイロット」や「アキュラMDX」など商品ラインナップを強化し、「ようやくそういうこと(LOL)が言える環境になった」。
LOL実現のために真っ先に重要となるのが、中古車価格の維持だ。車は住宅の次に資産価値が大きい耐久消費財。中古で売るときに再販価値が著しく下がっていれば、企業への信頼が損なわれる。逆に下取りが高ければ、買い替え時に組む追いガネも少なく、気持ちよく次のホンダに乗り換えてもらえる。
実際、米国の自動車残価基準を決めるALG社がその年最も残価を高く維持した会社に与える「レジデュアル・バリュー・アワード」をホンダは6年連続受賞している。実はトヨタも2位の常連だったが、昨年は大型車の価格下落などが響いて4位に転落した。
米国だけではない。インドの武田川氏は、隣国パキスタンに有名な話があるという。「ホンダのオートバイ『CD70』のCDはキャッシュ・デポジットの意味だと言われている。買って1年後に売ってもほぼ同じ値段で売れるから、まるでおカネを預けているようなものだと(笑)」。
残価維持の方法は単純だ。まずは製品自体の品質を高めること。そして値引きしないことだ。
だが、これが難しい。たとえば米ビッグスリーは、生産量を確保するために在庫を積み上げては、高額の販売奨励金(インセンティブ)をつけて値引き販売する--その繰り返しで顧客の信頼をずるずると失っていった。