もう企業は信じない?米国の若者の「悟り」 アメリカンドリームは「夢のまた夢」

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デジタル・ネイティブの雇用を象徴する言葉として、「オンデマンド・エコノミー」というものが広がっています。

「オンデマンド」というのは「注文対応の」つまり注文があって初めて仕事が成立してお金がもらえる。つまり毎日会社に行っていれば給料が出るシステムではないということです。

フリーランサーが全体の4割になる?

ギグ・エコノミーも同じ意味です。そしてオンデマンド・エコノミーの主役はフリーランス。つまり「セルフ・エンプロイドself employed=自営業者」。契約ベースで仕事をする人たちです。

フリーランサーをサポートするノンプロフィット団体「フリーランサーズ・ユニオン(Freelancers Union)」によれば、実はアメリカでは既に労働者の34%、つまりほぼ3人に1人はフリーランスという数字があります、その数字は2020年までに40%に達するという予測もあります。日本はなぜか若者自身が「新卒一括採用」を批判するケースが見られますが、こうした慣習のおかげで、不景気下においても新卒者の多くが就職できる日本は、アメリカに比べると大変恵まれているともいえます。

そして35歳以下のミレニアルズだけ取ると、その割合は既に44%にも達しています(35歳から50歳までのジェネレーションXでは32%)。

その背景には、前述したように大学を出たからといって、すぐに条件のいい正規雇用を得られないという現実があります。
だったら前述したように大卒の雇用が改善すると、フリーランスも減っていくのでしょうか? いや、そうとは言い切れない部分があります。

フリーランスは「フリー=自由」という言葉がついているだけに、自ら選択して自分で自分の時間をコントロールするというニュアンスが強く含まれる、もともと独立心が旺盛なアメリカ人に合った雇用形態です。さらにテクノロジーの発達であらゆる意味で自由度が増した、まさにデジタル・ネイティブのミレニアルズこそ、オンデマンド・エコノミーの申し子と言えるでしょう。

またフリーランスはスキルが高い人ほど有利なシステムでもあります。職種もコンピューター関連、グラフィック・デザイナーからマーケティング・スペシャリスト、看護師まで様々。こうしたスキルを武器にオンデマンド・エコノミーの海をたくましく泳ぎまわるミレニアルズが少なくありません。

でもフリーランスには正社員と比べてなんとなく後ろめたいイメージがあります。その大きな理由はもちろん所得で、フリーランスのための職探しサイト、クラウド・ピープス(Cloudpeeps)のアンケートによれば、フリーランスの所得の中央値は2万ドルから3万ドルで、アメリカ全体の4万7千ドルに比べると格段に低くなっています。

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