もう企業は信じない?米国の若者の「悟り」 アメリカンドリームは「夢のまた夢」

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また国民皆保険ではないアメリカでは、フリーランスは安くはない健康保険料を自ら負担しなければならないし、退職後の年金も個人で準備しなければならないという厳しい現実があります。しかし今後フリーランスの数が増えれば、それに対応した法整備が求められていくでしょうし、逆に本当に働き方として定着するかどうかも、こうした環境が整うかどうかに関わってくるでしょう。

そんなフリーランス志向が強まる一方でもう一つ注目されるのは、ミレニアルズ起業家です。

起業家の世代

ミレニアルズは起業家の世代とも呼ばれています。コンサルティング会社「ミレニアル・ブランディング(Millennial Branding)」の調査では、高校生の7割が起業家指向で、大学生の6割が卒業後すぐに起業したいと考えている、という結果も出ているほどです。

その背景には、かつてと違って今はインターネットが普及し、起業に必要なネットワーキングから資金調達(クラウドファンディングなど)、販路開拓までが、個人でも可能になったという現実があります。

たとえ新卒で会社で就職できたとしても、経済状況によってはいつレイオフされるかわからない企業で働くより、自分で好きなビジネスを立ち上げた方が、時間も自由になるし、何より人生の目標達成に近くなると考える人が増えているのです。中には学生時代に起業してみて、軌道に乗らなければやめて就職活動に切り替える人も少なくありません。その規模も本格的な投資を受ける起業家から、ネットで手作りTシャツを売る人までさまざま。

ちなみにこうしたスタートアップ起業は、多くの社員を抱えるよりもスキルの高いフリーランスを雇う傾向にあり、ミレニアルズのフリーランス志向と起業とはここでも繋がっています。

ブルックリンで昨年大きな話題になった抹茶ドリンク専門店『MATCHA BAR 抹茶バー」は、ニューヨーク大学に在学中の兄弟が起業したお店です。軌道に乗ればそのまま続け、失敗したら就職しようと思って始めたとのことですが、今のところ大成功しています。

こんな風にフリーランス、起業家が脚光を浴びる中、旧来の企業でも仕事のやり方に変化が起きているようです。

次回の記事では、こうしたフリーランス志向、起業家志向に企業側がどう対応しているかといった点について引き続き取り上げます。

(後編につづく)
 

原田 曜平 マーケティングアナリスト

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はらだ ようへい / Yohei Harada

1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『寡欲都市tokyo』などがある。YouTubeはこちら

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シェリー めぐみ ジャーナリスト、テレビ・ラジオディレクター

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横浜育ち。早稲田大学政経学部卒業後、1991年からニューヨーク在住。

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